澁澤龍彦展と文章修業

『澁澤龍彦   ドラコニアの地平』展


『私の文章修業』(朝日新聞社)という本の、何人もの方が書いているなかに「嘘の真実・澁澤龍彦」の章がある。
そこでは、高校から大学時代にかけて、熱心に読んだコクトーから、多くのことを教わった気がする、としたあとに、こうつづけている。
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〈たとえば「軽さのエレガンス」ということがある。文章は、あまり仰々しく重々しくなってはいけないのである。伊達の薄着のように、着ぶくれしないで、しゃんとしていなければならない。軽さもエレガンスも、怠惰や無気力を拒否する精神の特質であろう。〉
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『澁澤龍彦ドラコニアの地平』展(世田谷文学館・12月17日まで)に行った。遺された原稿のコーナーがあった。原稿は、2B、3Bの鉛筆で書き、直しは、万年筆パーカー21で入れたという。それを見てこの「嘘の真実」を思い出した。文章修業では、軽さのエレガンスのほかに、スピード、スタイル、独創性についてもふれているが、それをここに書くと、重ね着になってしまう。