花醍醐と五分散り

花醍醐と五分散り

 

花醍醐という言葉を、岡野弘彦氏の文章で知った。〈『東京新聞』4月11日夕刊・美しく愛(かな)しき人々〉。


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 吉野山の桜が咲ききわまった頃、風がぴたりと静まって不思議な静寂が続いたと思うと、俄かに山が鳴り突風が吹き起こって、全山の花を空に吹きあげ、一転してゆっくりと地にふりそそぎはじめる。魂をうばわれるような美しさを、「花醍醐」というのだそうな。


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花見をしたくなって、井の頭公園に出かけた。途中の道で、帰ってくる友人とすれ違った。「咲いてた?」というと「五分散りかな」と答えた。