ああ、熱戦

高校野球 東・東大会

 

「ウー、 アッチッチ、アッチッチ — 昔、 郷ひろみが 、こんな歌をうたっていたなあ 」 といいながら、うしろの席にオトコが座った。 東京、快晴、神宮球場、高校野球の東・東京大会。 気温は40度に近いだろう。上から下から左から右からの熱気。 私の連想するのは、郷ひろみでなく、天津甘栗だ。
 「カマのなかに砂があり、その砂のなかにザラメと栗をいれ、暖めると、ザラメが匂いを出す。そして、栗に色とツヤがつく。女の化粧と同じですよ」 と、銀座の甘栗屋さんから、聞いたことがある。
 「初めは、火をカーッといれる。そすと、栗がぶわーっとふくらむ。でも、破裂されては困る。その寸前で、火を少しずつ落としていく。そすと、なかがしまってきて、皮がうまく剥けるようになるわけ。 — ええ、とにか く、焼く匂いが肝腎でね、お客さんがこないと、じゃちょっと ゴマを焚くかと、匂いを流すと、人は集まってくるんだね」
 グラウンドでは、栗のような頭の選手たちが、走り回っている。 アッチッチ。     

(この項つづく)