金沢みやげ

ちとせ

 

金沢に取材に行った人から、おみやげに、お菓子をいただいた。森八、というお店の名前も、ちとせというお菓子のことも、『加賀金沢  故郷を辞す』(室生犀星著・講談社文芸文庫)で、知っていた。
包み紙をほどいて、食べると、ほどよい歯ごたえのあとに、餡にたどりつく。全体の淡い感じが、ちょうど3月3日、ひな祭りのころにふさわしいように思われた。「寒蟬亭雑記」の「菓子」の最後のところは、こういう文章で終わっている。

それらの菓子は色彩的にいえばことごとく白と赤の二色から配合され、主に品と雅と淡さとを目ざした味わいから造られてあった。その色と味わいの狙い方にも間違いのない後の世の心を摑んでいるようである。

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