和綿の糸紡ぎ体験に行ってきました

 

MOTTAINAIクラフトあまたさんで開催された、愛知県の岡崎から『本気布(マジギレ)』というブランド名でオーガニックコットンの製品を作られている稲垣さんを招いての「むかし布の地産地消 〜オーガニックコットンとガラ紡体験〜」に行ってきました。

まずは和綿の種取りから。しっかりと綿に守られた種を採り出すのはなかなかに至難の業。採り出せたと思っても綿のもしゃもしゃがびっしりと種の周りにくっついている。

これを、骨董屋さんで見つけたという江戸期の綿切りロクロで挟んでくるりとまわすと気持ちいいようにぽろぽろ綿と種が分かれます。

種のほうは来年の5月に植えるのだそうで置いておいて、綿のほうを手でほぐすのですが、ほぐれているのか単にちぎれそうなのかわからない状態に。そこで使うのがタコ糸と棒で作った弓。

これで綿をはじくとあら不思議。どんどん綿がほぐれてフワフワになります。最後にフワフワと広がった綿を折り畳んでクルクル丸めて手のひらサイズにし、縒りながら引っ張って糸を繰り出して行きます。縒りの力で下のフワフワな綿がどんどん引っ張られて糸が出来ていくはずなのですが、凸凹になったり途中で切れたり、これも散々なことに。ガラ紡という道具を使って糸にしていきます。

ガラ紡は、臥雲辰致という明治初期の発明家が作った糸紡ぎ道具で筒状のいれものに綿を詰めて立て、その円筒を回転させながら綿を引き出していくというもの。何本もの糸巻が同時にできて飛躍的に早い!これ作った人、天才!と思ったら、第一回の内国勧業博覧会で1万4千点余りの中から見事金賞を受賞したものだそう。この道具を博覧会で見た多くの人が技術を持ち帰って自分たちで作り、東海地方でかなり盛んになり、トヨタの前身「豊田紡績」が生まれたそうです。高度成長期に伴い自動車に分野へ進出し、現在のような世界的企業となったトヨタのルーツは、綿から始まっていたのでした。

 

稲垣さんは、手で種とりから糸紡ぎの体験をしてもらうのは、これだけの手間と時間がかかるということを感じて欲しいから、とおっしゃいます。イギリスの綿花需要からアメリカの南部プランテーションが生まれ奴隷制度が始まり、大規模な綿畑では収穫を早めるために空から枯葉剤を散布しこれが後にベトナム戦争にも使われました。この大地を汚し、人を傷つける綿の大量生産へのアンチテーゼとしてオーガニックコットンに立ち返ろうという活動が生まれ、稲垣さんもそれまでやってきた繊維の仕事をすべてオーガニックコットンを広めるスタイルに切り替えたそうです。稲垣さんはお店は持たず、WEBshopと各地でのワークショップや出店で活動をされています。衣服は毎日着るものなのに食べ物ほど意識されていないような気がする、という言葉に、参加者の皆さんも大きく頷いていました。