屋久島 田畑を巡る旅 その2

 

翌日も晴天。大きなバナナの木が見える食堂で美味しい朝ご飯をいただいた。サバのなまり節を薄く切って出汁をとったお味噌汁、飛魚の一夜干しとつけあげ、新鮮な野菜。ヒュッテフォーマサンヒロは滞在中ずっと泊まっていたいくらい居心地のいい宿だった。帰り際にこちらの奥様が京都出身だと知って、屋久島との距離が縮まった気がした。

この日は先日噴火のあった口永良部島から避難してきている皆さんと一緒に、田植えとカヤック体験をするイベントがあり、田植え指導に呼ばれていた本武さんにくっついて参加させてもらった。束でなく一本ずつ苗を植えていく方法で、うまくいくとこの一本から3膳分ぐらいのお米がとれると聞いて驚いた。草や虫や微生物の力を借りる自然農の田圃は、台風を察知すると自ら成長を遅らせたりして災害にも強く、長い目で見ると効率がいいのだそう。素足に泥の感触が気持ち良かった。「屋久島での避難生活はとても恵まれていて本当にありがたいけれど、一日も早く口永良部島へ帰りたい。帰ったら、故郷でこうやって、自然農の田圃を復活させていきたい」切実な願いを聞いて、胸が詰まる。

田植えのあとは川へ行ってカヤック体験。島育ちの子供たちは、運動神経がいいのかすいすいと上手に大きなカヤックをあやつる。私たちも便乗してすっかり夏休みの小学生気分で楽しんでしまった。ここで皆さんとさよなら。子どもたちはみんな暑い中元気でよくしゃべり、笑い、人懐こくて可愛かった。短時間お邪魔しただけだったけど、少し名残惜しくなる。

お昼は、ワルンカラン というアジアン料理のお店に行く。ショーケースに並ぶ色とりどりのおかず。牛小屋を改築して作ったシックな店内で、朝早くから一人で作っているという十数種類のアジアンおばんざいをいただいた。凄いなあ、と思っていたら、こちらのご店主も京都のご出身。姉妹都市みたいな繋がりっぷりだ。

お昼の後は、冷たい水が心地よい川で泳いだり、海に行って珊瑚ひろいをしたり。おやつに本武さんが冷凍タンカンを用意してくれた。染みわたる美味しさ!!強い陽射しで乾いた喉に、これ以上のデザートはなかった。

それから屋久島で最大級という「大川(おおこ)の滝」に行き、先日までの豪雨の影響で一段と激しいという滝の流れに、すっかり言葉を失ってしまった。

「明日の朝ご飯用にパン買ったらいいよ」と、すすめられて「樹の実」 さんへ行く。ちょうど私たちの朝ご飯分ぐらいを残し、あとは売り切れ状態だった。ここで焼いているピザも、とてもおいしいのだそうだ。テラスでアイスコーヒーや野草茶をいただく。庭にミカン畑があり、向こうに海。この島はどこにいってもこういう風景が広がっている。贅沢だなぁと思う。

この夜は共有キッチン付宿に泊まって自炊。本武さんの作ったジャガイモや獅子唐、生姜と、自然食品の店みみ商会さんで買った食材を使う。みみのご店主は27年間「医食同源」をモットーに、良質な食材を扱い続けている。小さいけど、調味料からなにから欲しいものがちゃんと手に入る品揃えだった。

冷房の全く効いてないキッチンで、もうもうと熱気に蒸されながらビール飲みながらごはんを作った。凄腕料理人ミヤビちゃんの技を間近で見られると思ったけれど、私がサブジひとつ作るのにジタバタしている間にすいすいと、玄米をいい具合に焚いたり、ひじきとごぼうのかき揚げやら、きゅうりと切り干し大根のナムルやら美味しいものをものすごい速さで次々に作りだしていて全然目が追い付かなかった。晩御飯を食べながら農の話、未来の話、その他いろいろ、話した。夜も更けて再び平内海中温泉へ。二日目にして全然感動が薄れない。月は昨日よりもう少し太ってきて明るく、昨日より少し近くに迫った波の音が強く聞こえた。

 

つづく