夏、涼しく

ビブリオバトル

『チルチンびと』84号の特集「夏涼しく、冬暖かい木の家」にちなんで、〈日本の夏〉をテーマにビブリオバトル、あるいは、納涼読書会。

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A君。〈冷房も何もない、むかしの盛夏に、私たちをほっとさせてくれるものは、何といっても緑蔭と風と、そして氷水だった。〉というのは、池波正太郎『江戸の味を食べたくなって』(新潮文庫)。いいでしょう。この、ほっとさせてくれることを味わうのが、人生じゃないですか。氷あずきが七銭で、子どもには高いので、駄菓子屋で、餡こ玉を一銭で買い三銭の氷水にまぜて食べた話も。いいんだなあ。

M君。あ、ぼくも、氷ですよ。伊丹十三『女たちよ !』(文藝春秋)の「ナガ」の章から。〈高校の頃、私たちは氷のことを「ナガ」と呼んでいた。学校の近くの氷屋の旗が、氷という字の点の打ち方を間違って「永」という字になっていたのである。〉そんな旗の下で、イチゴやレモンやメロンの氷をアルミのスプーンで食べる。これ、夏の風景です。

Sさん。夏はカレーでしょ。で、カレーといえば、安西水丸。『村上朝日堂』(村上春樹と共著・新潮文庫)でも、カレーライスの話が、出てきます。〈ぼくにもしも最後の晩餐がゆるされるのだったら迷うことなく注文する。カレーライス、赤い西瓜をひと切れ、そして冷たい水をグラスで一杯。〉カレー、西瓜、冷たい水。これぞ、夏の3点セット。

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『チルチンびと』84号「特集・夏涼しく、冬暖かい木の家  ― 風土に寄り添う住まいと暮らし」は、6月11日発売です。