山口小夜子・陰翳礼讃・羊羹

山口小夜子  未来を着る人

『山口小夜子  未来を着る人』へ行く(東京都現代美術館・ 6月28日まで)。黒と白の世界を堪能した。うしろで観ていた女のひとの「やっぱり、陰翳礼讃ね」という声が聞こえた。見ると、そのひとも黒い服を着ていた。そうなんだ。うちに帰って『陰翳礼讃』を読まないといけないような気がしてきた。

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』(中公文庫)を読む。〈かつて漱石先生は「草枕」の中で羊羹の色を讃美しておられたことがあったが、そう云えばあの色などはやはり瞑想的ではないか。〉という箇所がある。そして、つづく。〈人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。〉

読んでいるうちに、今度は羊羹を食べたい気分になって、明日、買いに行こうと思った。