永六輔さんのおみやげ

永六輔さんのおみやげ

 

永六輔さんが、体調の不良で、すべての番組から姿を消すというニュースがあり、驚いた。何年も前、知り合ったころの永さんは、いつも元気だった。私の勤め先にひょっこり現れた。たいていいつも、竹で編んだ買い物かごをさげて、それもたいていいつも、旅の帰りだった。かごの中から、おみやげをとりだしてくれた。

写真の、顔をかかえこんでいる木彫りの男性も、おみやげの一つで「これは、恥ずかしがって顔を上げられないんです」という説明だった。永さんの一家は、含羞の一家だと言っていた。自宅への道を歩いていて、向こうから父親がくると、どちらからともなく、横道に入ってしまう、と言っていた。「なぜ?  お互い恥ずかしいから」 そして、他人の恥ずかしい行為についても、恥ずかしそうに語るのだった。この木彫りの男を見ると、いつも、そのことを思い出す。永さん、元気になってください。