安西水丸さんのいない風景

安西水丸

安西水丸さんが、亡くなったあと、いろいろなひとが、いろいろな想い出を、いろいろなところに書いた。その一つ。エッセイスト・平松洋子さんの「水丸さん、ありがとう」(『週刊文春』4月24日号 「この味」)を、読んだ。そこに、こんな二人のやりとりが、あった。
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安西    空想や想像って、無料で楽しむことができる一番の楽しみ。もうひとつは車窓の風景、あれも楽しいですよね、電車に乗ってね。
平松    自分は動かないのに、向こうがどんどん変化していってくれて。
安西     そうですね。だからね、僕は人間としても車窓の風景みたいな人間になりたいって思ってるんです。絵葉書になるような風景じゃなくて、すーっとこう、みんなが見て通り過ぎるみたいな感じで。
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車窓の風景みたいな人間 ― それも、また、a day in  the  life だったか、と思う。そのエッセイに、『チルチンびと』に載ったこのイラストが、そえてあった。