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土鍋プレゼント

伊賀焼土鍋

鍋の季節になった。 『東京人』という雑誌の2月号は「鍋でほっこり」という特集を組んでいる。暖かくておいしそうな1冊のなかに、久住昌之・太田和彦・平松洋子という3人が鍋を囲んで、こんなふうに、鍋を語っている。

太田 どこかに、文学的要素があるわけですよ。ただ「うまい、まずい」じゃなくて、しんみり食べてみたり、にぎやかに食べてみたり、という。

平松 鍋をみんなで食べたときは「おいしかったな」っていうより「楽しかったな」って感覚ですよね。

久住 ああ。

太田 納得。

広場・今月のプレゼント」は、「伊賀焼土鍋」です。 ご希望の方は、どうぞコチラをごらんください。

 


門松大賞

門松大賞

一口に門松と言っても、姿形には多様なバリエーションがあるもので、三年前の正月に都内各地の門松を見て回わった際には、竹の種類や門松としての仕上げもそれぞれに違うことに驚きました。……  この “広場 ” 連載 「この竹あの竹(初田徹)」に、一昨年、こういう文章が載った。そして、個人的にナンバーワンとして 、新宿伊勢丹の門松をあげていた。門松大賞か、と思った。

それを読んで、新年早々、伊勢丹へ行ったのは昨年のことである。今年も行くのでしょう ?  と聞かれた。モチロン。

1月3日。晴れ。暖かい。新宿伊勢丹へ。飾り気の少ない、スッキリした立ち姿の門松を、みなさまも、ごらんいただきたく。

 


縁起小判

縁起小判

 

浅草寺へ行った。相変わらずの人出の多さに、驚く。外国人観光客の多さに、驚く。日本人かと思うような顔立ちの人から、ナニ語かで話しかけられた。その手つきから、写真を撮ってほしいのだ、ということがわかる。渡されたカメラの背面の画像に、5人の女性の笑顔が映る。シャッターを切ると、彼女たちが、そろって頭をさげた。お参りをすませ、人混みを抜けて、めざすのは「縁起小判」を手に入れることだ。新しい年の「福徳」が祈願されているという小判。いつも、この “ 広場 ” を愛し、訪れてくださったみなさまに、せめてもの気持ちとして、ご利益をお届けできれば、と思う。

ありがとうございました。2016年も、よろしくお願い申し上げます。

 


ホワイトクリスマス

神保町チャボ

先週、志賀高原へスキーに行った友人が、泥の上を滑ってきたよ、と言った。気温が高いので、人工降雪機も使えなかったようだ、という。暖冬である。どこのスキー場も、同じようなことらしい。

ホワイトクリスマスなんて、望めそうもないから、「神保町チャボ」に行った。靖国通りから1本裏手の路地。ここは、ホワイトカレーの店である。野菜のホワイトカレーを注文。ドリンク付きで950円。なぜ、白いのですか?「牛乳でルーを溶くからです。初めは、カレーの黄色をしていますが、溶いていくうちに白くなるのです」。

口当たりがよく、それでいてどこか辛く、気がつくと身体が暖かい。
それが、今年のホワイトクリスマスだった。

 


棒年会

棒年会

12月14日、昼。
今日は、忘年会なんだ、と出会った友人に言ったら、彼は「去年今年貫く棒の如きもの」という虚子の句を教えてくれて、「おたくは、木の家がお得意だから、棒年会かな」と言った。
12月14日、夕方。
いつものように、風土社で、忘年会がひらかれた。建築家、工務店関係者、写真家、寄稿家……その他、たくさんの方々で賑わった。初めて参加した、若い建築家のスピーチあり。おなじみヴェテラン建築家のスピーチあり。風土社社員のスピーチあり。工務店社長のスピーチあり……。そして、最後に、新社長の挨拶。大いに大いに大いに盛り上がる。楽しい夜になった。

どうかみなさま、よいお年を。こころからお祈り申し上げます。


暖かい冬のために〈後篇〉

ビブリオ・バトル

『チルチンびと』86号  特集「火から始まる冬支度」にちなんで、ビブリオ・バトル― 暖かい冬のために。後篇。

……

Tさん。 〈このごろ朝が寒いので床の中で寝たままメリヤスのズボン下をはき、それから、すでに夜じゅう着たきりのシャツの上にもう一枚のシャツを、これも寝たままで着ることを発明して実行している。〉発明ですって。書いた人は、寺田寅彦。『柿の種』(岩波文庫)の  ー  曙町より、から。ご存知、物理学者で、エッセイスト。少しあとには、この朝は頭が悪く、右の脚が、ズボン下の左脚に入ったりする、とかで、短い一本一本に、独特の味がある。

Sさん。 物理学者の目、といえば、『物理の散歩道』(岩波書店)も同じ流れ。ロゲルギストという7人のグループが、語り合う。たとえば、その3巻には、「防寒夜話」。〈寒い地方 ー 東北だったかな ー  で、ハダカで寝るところがあるんだってね。もちろん、ごろ寝じゃない、ハダカでふとんにもぐりこむという意味だ。その方がねまきを着るよりあたたかいという……。〉で始まり、話は空気層に。そして、ハダカで寝ると本当に暖かいかを、論じる。これも、ユニークな味ですよ。

Uさん。 物理学者の目が続いたから、文学者の目も。『正弦曲線』(堀江敏幸・中央公論新社)に、「昼のパジャマ」という章があります。〈パジャマという衣装を夜にさえ身につけなくなって、もう三十年以上になる。昼寝は普段着のままがいちばん気持ちよいと思うので、パジャマどころか着替えも論外。夜は夜でいつの間にか寝ているというのが常態だから、 ……〉と読み続けるのを、遮るSさん。それ、面白そうだけど、今回のテーマは寝る話ではないからね。冬眠なら、いいけど。

……

『チルチンびと』86号  特集「火から始まる冬支度」は、12月11日発売です。お楽しみに。

 


暖かい冬のために〈前篇〉

ビブリオ・バトル

『チルチンびと』86号特集 「火から始まる冬支度」にちなんで、ビブリオ・バトル― 暖かい冬のために。前篇。

……

Aさん。 高山なおみ『日々ごはん  12』(アノニマ・スタジオ)です。たとえば、12月のある日。〈朝ごはんは、「ルヴァン」のカンパーニュにゴーダチーズ(オレンジ色のけっこう熟成されたやつ)をのせて焼いた。これはまるで『ハイジ』の冬ごはん。ものすごーくおいしかった。〉冬ごはん、いいな。爽やかなエッセイの間にレシピ。たとえば、ある日の夜ごはんは、〈牡蠣酢、きりたんぽ鍋(比内地鶏、白滝、芹、ごぼう、長ねぎ、舞茸、きりたんぽ。〉と、読んで温まる。絶品。

Mさん。 鍋といえば、『江戸の味を食べたくなって』(池波正太郎・新潮文庫)。「二月、小鍋だて」の章。〈小鍋だてのよいところは、何でも簡単に、手ぎわよく、おいしく食べられることだ。そのかわり、食べるほうは一人か二人。三人となると、もはや気忙しい。〉そして、〈刺身にした後の鯛や白身の魚を強火で軽く焼き、豆腐やミツバと煮るのもよい。〉とある。ねっ、これも読んで温まる。こたえられませんよ。

D君。 鍋もいいですが、と『ヘミングウェイ短篇集 上』(谷口陸男編訳・岩波文庫)を取り出し、「二心ある大川」のページをを開く。〈彼は切株から斧で切り取った松の厚切りで火をたきつけた。その上に焼き網をかけ、四本の脚を靴で土の中に押しこむ。〉豆入りのポーク缶とスパゲティ缶をあけて、網にのせたフライパンにいれるんだね。食べる前に、男は、言うんだ。〈わかってるさ。こいつはまだ熱すぎる。〉これがいいんだ。

……

『チルチンびと』86号   特集「火から始まる冬支度」は12月11日発売です。お楽しみに。

 


タテかヨコか それが問題だ

近江町市場

 

魚屋さんで、魚を客に向かって、タテにならべるか、ヨコにならべるか、という話であります。

〈…… 金沢の魚屋の店先のけしきは関西流か江戸流か …… そんなところから話題が転がったのだが、どうやら金沢は魚については関西流という結論だった。そのちがいを見極めるモノサシは、魚を客に向って縦にならべるか、横にならべるかであるという。つまり、関西の魚屋は魚を縦にならべて売り、関東は横にならべるしきたりになっているというのだ。…… 〉(村松友視著『奇天烈食道楽』河出書房新社)

そして、彼は金沢の近江町市場に調べに行く。ほとんどは、縦であったが、いくつかの店では、魚を置く台の都合か、縦横が混じっていたと書くのである。ま、フツーの人なら通り過ぎるところを、オヤ、と立ち止まるのが、村松流である。こういうのを読むと、誰だって気になる。ずっと以前に読んで、ふと思い出し、金沢在住のMさんに、写真を撮ってきてほしいと頼んだ次第。

 


オノ・ヨーコのメッセージ

オノ・ヨーコ   私の窓から


「オノ・ヨーコ   私の窓から」(東京都現代美術館  ~2016年2月14日)に行った。どの部屋からも、たくさんのメッセージが送られてくる。昨年、読んだインタビュー記事を思い出す。

〈 …… ヨーコのメッセージは、不変にして普遍的だ。「今、好きな言葉は ?」という問いには、“ IMAGINE  PEACE ”    “ Give  peace  a  chance ”  “  WAR  IS  OVER ,if  you  want  it! ”  の3つのフレーズが返ってきた。いずれもジョンとヨーコが発信し、国境を超えて広がり続ける平和のメッセージ。…… 〉(『marie  claire style .jp  2014 12月)

 


ぼくらの地域主義なんだぜ

チルチンびとマーケット 福井

『ぼくらの民主主義なんだぜ』(高橋源一郎著・朝日新書)が、ベストセラーである。『朝日新聞』の論壇時評を1冊にまとめたものだ。一回400字 ×5枚の時評の原稿を、1週間かかって書く、と著者インタビューで、語っていた。その内容の濃さはもちろんだが、タイトルのよさも人気の理由だろう。あとがきを読むと、ナット・ヘントフの『ぼくらの国なんだぜ』という小説から、とった、とある。

11月7日、雨。福井の住まい工房で、「チルチンびとMARKET」がひらかれた。“ 地域主義工務店の会 ” の名にふさわしく、地元の人気のショップが、多数出店。天然酵母のパ ンが、売り切れる。オーガニック・ランチボックスが品切れになる。インドの判子で布に模様を描くワークショップに、ひとが集まる。 地元の主婦、その家族、友達と連れだってくる若い人たち ……  来場者 は500人を超えた、という。来年もまた、各地で、「チルチンびとMARKET 」が、たのしく催されるはずだ。なぜって、それが、ぼくらの地域主義なんだぜ。