香川県
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住宅特集

南北に風を通し、暮らしを街に開く家  

 全国に普遍性と地域性のある住宅をつくってきた田中敏溥さん。雨が少なく凪が起こる瀬戸内式気候をどのように捉えたのか、香川県の高陽建設と岡山県の福富建設の事例から紹介する。まずは前者が手がけた、軽やかに風をつかまえる家。ご主人は元々田中さんのファンで、工務店との思わぬ巡り合いで夢が叶った。

 大通りから一本入ると見えてきたのは凛とした端正な佇まいの家。深く出した軒が夏の強い日差しを遮り、外から見る室内は過ごしやすそうだ。

 中に入ると南北の窓を通じて裏山の風が抜け、木の足触りや香り、さらりとした空気感に外の暑さを忘れる。白い天井によく映えているのはリズムよく架かる床梁。建具を引き
込めば内外が一体化する。

 1階は家族室が間取りの中心。北側には落ち着いた雰囲気の和室が並び、日本家屋のようなくつろぎと、モダンな感覚をあわせ持つ空間だ。

 Nさんは夫婦と赤ちゃんの3人家族。結婚後、どちらからともなく家づくりを考え始めたそう。たまたま高陽建設の展示場を訪れ、木の香りと、伝統型の家もできる技術力が気に入った。そんな中、同社の西尾直樹社長から「建築家の田中敏溥さんと家づくりをしませんか?」との提案が。

「思いがけない偶然でした。住宅雑誌をめくるたび、いいなと思えるのはどれも田中さんの住宅でしたから」(ご主人)。

 その地方の気候風土を捉えながら、気持ちよさという普遍性のある住宅をつくり続けてきた田中さん。「一日の中で心地よい場所が変わる猫のような暮らしがしたい」というNさんの希望から、思い切りのよい開口部のある南面と、やさしい光が入る北面の両方を生かした。加えて障子をはじめとする建具の開け閉てで雰囲気をがらりと変える。「何もしない勇気が大事」と言う田中さん。奇をてらうデザインもなければ余計な線もない。外も中も美しく見えるための納まりを徹底した。
 


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