豊かな温泉と暖かな炎に癒されて
豊かな温泉と
暖かな炎に癒されて
小高い丘の、緑豊かな温泉付き住宅地。
壮麗な山々の景観と澄み渡る空気、
そして静寂に包まれた週末住宅で、
理想の暮らしを送る夫婦を訪ねた。
栃木県さくら市 注文住宅 響屋 C邸
設計=渡辺響子(響屋設計室) 施工=㈲響屋 写真=垂見孔士 文=竹添友美
山野草と美しい敷き石が印象的な小径を抜けて玄関扉を開けると、大きくて抜けのよい板の間がある。隣には畳敷きの小上がりがあり、広々とした土間リビングへと続く。小上がりの正面には、奥さまがひと目ぼれしたという堂々たる風格の薪ストーブが置かれている。炎の暖かさに包まれた土間で、庭の草花や夜空を眺めながらの一杯。ここは、訪れる人につい長居をさせてしまう、居心地のよさに満ちている。
「こうやって火を眺めていると、子どもの頃を思い出します。夕方庭先に家族みんなが集まって焚き火をするのが、1日が終わる合図だったよね」と薪ストーブの火を見つめながら語る奥さまのかたわらで「うん、うん」とうなずくご主人。「私と主人は『動』と『静』みたいな正反対の性格だけれど、育った環境や価値観がとても似ていたのね。それでもこの家を建てるまで、これほど趣味が同じだとは気づきませんでした」と奥さまが笑うと、無口なご主人も照れたような顔で静かに微笑む。
これまで毎日24時間気が抜けない自営業を続けてきたCさん夫婦。子育てもそろそろひと段落し、週末は夫婦でゆっくり過ごしたい。そんな生活を思い浮かべたとき、まずご主人が考えたのは、湯船につかりながら心ゆくまで栃木の名山、男体山と女峰山の大展望を楽しむこと。奥さまは、本格的なしつらえの茶室をつくって趣味の茶道を極めることだった。
1階西側の奥、この家で最も静かな位置に茶室がある。5年前、ご主人や息子さんたちとともに習い始めた茶道は、今や奥さまの生きがい。千利休の流れを汲む宗偏流の先生は、とても魅力的な方だとか。「ここに先生をお呼びして、お茶会を開きたいですね。掛け軸やお花など、季節のしつらえ一つにしても奥が深くて、まだまだ勉強することがたくさん」と、夢は膨らむ。
2階に上がると、地名にちなんで「さくらの湯」と名づけた風呂がある。ここは雄大な山の風景を眺めながら我が家で温泉を楽しめる、ご主人いちばんのお気に入りだ。
週末住宅をつくろう、という夢は、当初7〜8年かけて実現するはずだった。ところがある日、本屋で奥さまの目に何気なく留まったのが、『チルチンびと』に載っていた工務店・響屋の、栃木の自然素材でできた家。「これだ!」と思った奥さまは、すぐに事務所を訪ねた。同社の社長で設計者でもある渡辺響子さんと話をしたり、施工例を見ていくうちに「この人にならすべて任せてもいい」と確信するようになったという。ほどなく、見晴らしの良さと温泉が湧き出るこの土地を気に入ったご主人が「今しかない」と購入を決める。
数年かかるはずだった理想の家が、1年足らずで完成した。「縁があったとしか考えられない」と、夫婦は口を揃える。「全部任せると言われたら、こちらも張り切りますよ。Cさんは褒め上手なんです(笑)」と響子さん。軽口を言い合いながらも固い信頼関係で結ばれた、依頼主と設計者の絆があった。
「ここに来ると、嫌なことは何も考えなくなります」とご主人。「早起きしてお散歩して、お風呂に入って。これが本物の贅沢ですね」と奥さま。夜、部屋の照明を落として式台に腰かけ、薪ストーブの炎を二人でぼーっと眺めていると、頭の中が「無」になるそう。夫婦の夢みた豊かな暮らしは、この家とともに、もう始まっている。
所在地 | 栃木県さくら市 |
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家族構成 | 5人 |
面積 | 敷地 406.63㎡ 延床 170.58㎡(1階 119.24㎡ 2階 51.34㎡)ロフト 13.24㎡ |
竣工 | 2010年3月(工期2009年8月~2010年3月) |
設計・施工 | ㈲響屋(担当:響屋設計室/渡辺響子) |
構造形式 | 木造軸組 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板、瓦棒葺き 軒天井=化粧野地板現し、モイス(厚6㎜) 外壁=リシン掻き落とし、杉板張り バルコニー=杉材造作 |
主な内部仕上げ | 天井=杉板竿縁 他 壁=鹿沼土入り漆喰(悠久楽土) 床=日光杉(厚20㎜+20㎜) |
有限会社 響屋
〒320-0052 栃木県宇都宮市中戸祭町2899-25
住まいは家族が毎日生活をする空間です。
家族が愛着を持って大切にできる住まいは永持ちします。
将来住み継ぐ家族にとって普遍的な快適性を維持してゆくためにも、
地域で古くから親しまれている良質な自然素材を使い職人たちの確かな技術と経験を十分に活かし、
腕利きの設計力で家族の夢と未来をカタチにします。
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