建築家と左官表現-その作例から学ぶ- 上野英二

建築家と左官表現-その作例から学ぶ- 上野英二

建築家と左官表現-その作例から学ぶ- 上野英二

伝統的な版築壁が現代の住まいに新しい感覚を生み出す
─京都府・時空が造る家─

設計=上野英二 写真=輿水 進

天空からの光と目地が赤錆土の表情を変様させ、和室にも季節が生まれる
─東京都・四季薫る家─

設計=上野英二 写真=相原 功

家に愛着と誇りを-土壁に込められる理由

100年使えるモノづくりを掲げた者にとって、これからの家は日本の家づくりの原点である自然素材と伝統技術を駆使し、もう一度日本人の生活様式を見直すことから始めなければ具体的に見えてこなかった。

100年使い続けられる家は単に耐久性があるばかりでなく、時代が変わろうとも機能を満たし、この家に暮らし続けたいという愛着と誇りがなければならない。

そのためには、常に目にさらされる壁の存在は大きく、時が経つにつれ味わいが増し飽きることのない壁はどうあるべきかを考え続けてきた。これまでに観たことのない壁をつくりたい、その壁自身に意味があり存在理由があるものがつくれないかと考えてきた。

そんな中、一時の見た目の良さと利便性を追求する工業製品を塗る仕事に疑問を持ち、土に魅せられ土の可能性に賭ける挾土秀平に出会った。こちらの要求に対し彼は具体的なイメージを持って試作し、試行錯誤の中から確信を摑む。そして、それを現場で実現させるために、自らが率いる卓越した技術を身に付けた職人(秀平組)たちに委ねつくりあげる。 土は数万年から数百万年の年月を経てつくられる素材ゆえ、この先同じ年月に耐えられるだけの力を秘めていると思う。土を使う我々はその力をこれからも探り続けなければならない。

■時空が造る家

所在地京都府
家族構成夫婦+子ども+祖母
面積敷地 782.51㎡
増築部分延床 85.07㎡
竣工2003年5月(工期 2002年7月〜2003年5月)
設計オークビレッヂ木造建築研究所(担当:上野英二)
施工オークビレッヂ木造建築研究所(大工棟梁:吉武智治)
構造形式木造平屋建て
増築部分主な外部仕上げ漆喰塗り一部版築壁
増築部分主な内部仕上げ新京壁塗り、版築壁

四季薫る家

所在地東京都
家族構成夫婦
面積敷地 392.16㎡
延床 275.59㎡(1階 134.85㎡ 2階 140.74㎡)
竣工2005年7月(工期 2004年9月〜2005年7月)
設計オークビレッヂ木造建築研究所(担当:上野英二)
施工オークビレッヂ木造建築研究所(大工棟梁:若田忠雄)
構造形式木造一部鉄筋コンクリート造
主な外部仕上げ大谷石積み 大谷石洗い出し一部リシン掻き落とし
主な内部仕上げ新京壁塗り、一部土塗り壁

チルチンびと 別冊34号掲載

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