小さく住むって面白い

小さく住むって面白い

小さく住むって面白い

文・イラスト・写真=童画家 本橋靖昭
植物絵・献立絵=土居みどり

お気に入りが傍にある楽しさ

私が「小さく住む」ようになった理由は、独身時代に仕事道具(画材や本、資料など)を持って何回も引っ越しをしていた経験から、必要な物を最小限にする癖がついたからです。

でも、それだけなら今のライフスタイルにはたどり着かなかったでしょう。幼い頃、家には爺さん婆さんがいましたので、年寄りの生活をよく見ていたことも、要因の一つです。爺さん婆さんは、「自分に必要な物」と「思い出の宝物」を身近に置いて暮らしていました。それらはたまに、新しい物に入れ替わることもありました。たぶん、その時の自分にとって必要な物を選択していたのでしょう。

他に思い出されるのは、年を追うごとに家の中が老人仕様になっていったことです。滑りそうなつるつるの板の間にはゴザが敷かれ、段差はなるべく低くおさめられていました。その暮らしぶりから、一人が一日の多くを過ごす空間はせいぜい2~3坪くらいだと知りました。そんなわけで、「生活だけなら5坪くらいあればいいんじゃないか!」と思うようになったのです。

そして現在…… 根が面倒くさがりなこともあって、宝物がいつでも手に取れて、庭や部屋や家具が小さくメンテも楽で、面白そうなことを考える時間が増える。小さな理想の空間が完成しつつあります。

爺さんが座卓に置いていたお気に入りの品「SEIKOSHA(精工舎)」の置き時計、うちわ、「NEO」シャーペン、万年筆

爺さんが座卓に置いていたお気に入りの品
「SEIKOSHA(精工舎)」の置き時計、うちわ、「NEO」シャーペン、万年筆、
この他に引き出しの中に3cmくらいの水晶玉が隠してありました。
(私がよく持っていってしまうので……)

お気に入りの場所をつくる面白さ

玄関、収納室、資料・客室のレイアウトはすぐに決まりました。まずは、自分たちにとって居心地のよい場所に、お気に入りのソファとテーブルを置きました。そして順次、客用テーブルや薪ストーブを設置していきました。つくり付けにしたのは本棚と作業テーブルです。私はすぐに家具のレイアウトを変えてしまう癖があるので、大物はつくり付けにして、自分を戒めています。

とにかく、「居心地がよい」「すぐ見つかる」「すぐ取れる」そして「片付けカンタン」を目標にしました。

小さな部屋で構成された我が家。

小さな部屋で構成された我が家。
コンパクトながら、動線を意識した家づくりで
居心地のよい空間を実現しました。

「IDÉE」のソファと「Karf」のサイドテーブルです。
30年以上前にスチームパンクのようなデザインに惹かれて買いました。
今でも気に入っています。

「IDÉE」のソファと「Karf」のサイドテーブルです。
30年以上前にスチームパンクのようなデザインに惹かれて買いました。
今でも気に入っています。

「小さく住む」ために必要なこと

まずは、床に置かなくてい物は壁や天井を活用すること。資料・客室の客用テーブルに置き型のフアライトが欲しかったのですが、歩きにくくなってしまうので天井に、ダウンライトのほかにスポットライトを設置しました。「小さく住む」と空間が狭く、いろいろなところに目が届き、「工夫の鬼」になれます。

客用テーブルは部屋が狭いので 家具工房さんにつくってもらいました。

客用テーブルは部屋が狭いので
家具工房さんにつくってもらいました。
また、お客さんが立ち上がる時楽に足を外に出せるよう
テーブルの足は2本にして、
椅子やテーブルは角丸にしました。

①おちょこ1杯くらいのオリーブオイルをテーブルにたらして、素早く全体に塗り広げる(1カ所に放置してしまうと染みになることがあるので注意!)
②5〜10分してから、乾いた布で余分な油を拭き取る。これだけです。
※詳しく無垢材の家具全般のメンテについて知りたい方は下記の工房さんに連絡してみ
てもいいかもしれません。
Tokuワークショップ 徳岡裕久(とくおかひろひさ)
〒198-0002 東京都青梅市富岡1-310-12 Tel 0428-74-5693

小さな暮らしと、小さな自然

「小さく住む」からには、小さな自然も部屋に欲しいと思っていました。そんな時、伊藤さんという盆栽の先生から「鉢の中のもみじ林」のつくり方を教わりました。秋になると、鮮やかに紅葉したちっちゃなもみじ林が見られるそうです。

たとえば、11月に手に入れたもみじの種は翌年の2月の下旬~3月までに鉢やプランターにまいておくとよいそう。今年はつくれませんでしたが、今年の11月には種を手に入れて、来年は「もみじの林」をテーブルの上に出現させたいと思っています。来年までの我が家の宿題になりました。

すばらしい夕焼けの日は外のテーブルにランタンとお酒を出して、お日様が沈むのをゆっくり眺めます。コウモリが飛び始めたり、だんだん星空になったり、あたりが暗くなり、夜が訪れるまでの自然が描くドラマがとても好きです。「小さく住む」からこそ夕暮れを楽しむ余裕も生まれるのでしょうか。家前に広がる自然が、自分だけの箱庭のように感じられます。

伊藤孝雄(いとうたかお)盆栽の先生

紅葉ももちろん魅力的ですが、伊藤さんの話では、
野草もうまく鉢植えすると面白いのだそうです。
野草なら私にもすぐできそうなので挑戦してみます。

※興味のある方は伊藤さんに連絡してみてください。
伊藤孝雄(いとうたかお)盆栽の先生 Tel 090-5780-1462
国風盆栽展や日光特別盆栽展などの管理もしているそうです。

最近のお気に入りはテキーラのソーダ割り。

最近のお気に入りはテキーラのソーダ割り。
グラスにたっぷりの氷、
テキーラ1に対してソーダ4の割合でステアして、
ライムを絞っていただきます。
清涼感を楽しみながら、暮れゆく
空の色と光のドラマを楽しむ至福の時間です。

本橋靖昭/童画家。
土居みどり/イラストレーター。
東京都青梅市在住。夫婦二人で出版、広告、放送、演劇、建築などの分野でイラストを描いてきました。青梅の仕事場には、まっくらになるとカモシカ、イノシシが現れヌエが空を飛びます。たまにはクマもやってきます(あ〜こわ)。今は「食」をテーマにしたイラストやレシピづくりにハマっています。
本橋靖昭の本
作画アシスタント=土居みどり
『怪談図書館』シリーズ(国土社)
『心のノート』小学校版表紙(文部科学省)
『ときめる森のおくりもの』(小峰書店)
『まっくら森』(サンマーク出版)

チルチンびと 104号掲載

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