DON工房・大野正博 コンパクトな平屋図面集

DON工房・大野正博 コンパクトな平屋図面集

DON工房・大野正博 コンパクトな平屋図面集

小誌でこれまで数々の住宅を紹介してきた建築家・大野正博さん。
多様な住まいの形の中でも、平屋は「平面の自由度が高く奥深い」と話す。
特集「コンパクトな家」に寄せて、大野さんの平屋設計術をうかがった。

写真=輿水 進

大野正博の平屋① 35坪 千葉県 松戸の家

大野正博の平屋① 35坪 千葉県 松戸の家

「松戸の家」は、設計当時近隣の開発が予想されたため、道路側に対しては閉じ、中庭を「コ」の字に囲うコートハウス型に設計されている。

開口一間半と面積を広くとった玄関土間には薪ストーブが。薪ストーブは必ず土間に、と大野さんは話す。土間床なら火や薪を気兼ねなく扱える。土間と廊下には、45センチの段差がとられ、ベンチ代わりに腰をかけ、薪ストーブの炎を眺めるにも、ご近所さんと茶飲み話をするにも勝手がよい。

中庭のまわりは、ぐるりと回遊できる濡れ縁。茶の間に面した位置にはデッキが。庭へつながる視線は、コンパクトにまとめた空間をのびやかに。掘り炬燵式の座卓のある茶の間と台所からは、豊かな緑を眺めることができる。

大野正博の平屋① 35坪 千葉県 松戸の家 平面図

所在地 千葉県松戸市
家族構成 夫婦+子ども2人
面積 敷地 291.3㎡(88.1坪)
延床 115.57㎡(35坪)
竣工 2002年10月
設計 DON工房 大野正博
施工 大畑工務店
構造形式 木造在来工法
主な外部仕上げ 屋根=ガルバリウム鋼板横葺き
外壁=モルタル吹き付けの上リシン吹き付け
軒天井=化粧野地板現し
主な内部仕上げ 天井=ベイマツ合板、サワラ縁甲板
壁=クロス張り、サワラ縁甲板
床=クリフローリング

大野正博の平屋② 37坪 千葉県 三咲の家

隣家がある南側にガレージ・予備室を置き、外廊下を挟んだ北側に茶の間・和室をまとめた棟を配した。外廊下の東西には二つの庭を。デッキのある前庭は茶の間の延長空間として、濡れ縁のある奥庭は主に物干し場として使われる。

「案の定、快適な空間になりました」と語るロフトは、巾一間の6畳。細長い空間に本棚とデスクをつくり付け、ベッドを入れた。幅の狭いスペースながら1方向に視線が通るため窮屈感がなく、1階を見下げれば、茶の間・前庭を一望できる特等席だという。

大野正博の平屋② 37坪 千葉県 三咲の家 平面図

所在地 千葉県船橋市
家族構成 夫婦+子ども1人(あと2人もときどき出入りする)
面積 敷地 230㎡(70坪)
延床 122㎡(37坪)
竣工 1999年10月
設計 DON工房 大野正博
施工 持井工務店
構造形式 木造平屋建て、一部小屋裏
主な外部仕上げ 屋根=大波スレート葺き
外壁=小波スレート、一部カナダ杉サイディング
軒天井=大波スレート現し
主な内部仕上げ 天井=ハードボード打ち上げ、ヒバ縁甲板張り(浴室)
壁=プラスターボード生地仕上げ、一部ビニールクロス貼り、ヒバ縁甲板張り(浴室)
床=ラオス松縁甲板張り、INAXバスユニット(浴室)

大野正博の平屋③ 25坪 広島県 三原の家

「三原の家」の敷地は南北に長い。南と西には道路があり、西側は北に向けた下り坂のため敷地とは段差がついている。また住宅街にあり、借景も望めない。

諸条件から、順光で緑を楽しめる北庭のプランとし、アプローチは段差のない南入りに。居室は庭とのつながりを考え、茶の間・水回り・寝室の順に北側から配置。茶の間は自ずと北向きになるが、平屋で影が小さいので十分に明るい。

北庭のほかに、寝室に面した南庭、風呂庭と物干し場を兼ねた東庭、玄関先を彩る西庭(茶の間と和室の採光の目的もある)が配され、四つの庭を楽しむことができる。

大野正博の平屋③ 25坪 広島県 三原の家 平面図

所在地 広島県三原市
家族構成 夫婦
面積 敷地 334㎡(101坪)
延床 81.73㎡(24.7坪)
竣工 2005年11月
設計 DON工房 大野正博
施工 井上建設
構造形式 木造在来工法
主な外部仕上げ 屋根=ガルバリウム鋼板瓦棒葺き
外壁=レッドシダー、窯業系サイディング
主な内部仕上げ 天井=ベイマツ合板厚4㎜、檜縁甲板張り厚15㎜(浴室、洗面)
壁=プラスターボード厚12.5㎜、ビニールクロス貼り(浴室、洗面)
床=杉甲板張り厚30㎜、玉砂利洗い出し(玄関)

大野正博の平屋④ 32坪 コンパクトな平屋計画案

敷地の持つ条件や住まい手の暮らしに合わせ、さまざまな設計をしてきた大野さん。最後に、特集「コンパクトな家」に寄せて、理想の平屋を考えてもらった。

「夫婦と子ども2人の住まいの想定です。敷地は、一般的な住宅街でしょうか。車が1台で済む設定なので、それほど田舎ではありませんね。対角線方向に景色の広がる立地でもいいですね」。

東南の庭に面した縁側。飛び石の先には東屋が配されている。前出の3例と同様、庭への視線の抜けや空間のつながりが心地いいプランだ。

土間と分けた玄関は、室内に冬の冷気を凌ぐ工夫だという。「玄関風の前室です。玄関はなくてもいいと思っていて。玄関戸を開けた状態を想定して空間を考えています」。入り口は、引き戸にするのが定番。解放時には扉がきれいに収まって隠れ、必要なときにだけ引き出せるので「空間をつなげ、視界を広げる」という大野さんの設計のスタイルにマッチする。

住まいを楽しくする仕掛け。平屋なら、幾通りもの可能性が。「平屋の平面は比較的自由がききますから、曲げる、出隅をつくるか入隅をつくるか……そんな操作で、空間をぐっと豊かにできます」(大野さん)。

大野正博の平屋④ 32坪 コンパクトな平屋計画案

チルチンびと 104号掲載

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