安全で快適な薪ストーブのための煙突選び
安全で快適な
薪ストーブのための煙突選び
写真=検見崎まこと イラスト提供=㈱永和
煙突の重要性を考える
薪ストーブを使用する上で無視できない問題が煙突火災です。薪を燃やすことによって生じる排気ガスには、クレオソートという物質が含まれます。これが煙突の内壁に付着し、外気により冷却されて発生するタールに引火するのが煙突火災の主要因です。定期的に煙突掃除を行えば避けられますが、煙突の性能によってもタールの付着量が違ってきます。
煙突には鋼板製で筒が一重のシングル管と、ステンレス製の二重の筒の間に断熱材を入れた、二重煙突などがあります。断熱材入り二重煙突は、外気の影響を受けにくく、タールの付着を最小限に抑えることができます。また外気の影響が少ないということは、常に安定したドラフト(上昇気流)が得られ、燃焼効率を高めることにもなるのです。
断熱材入り二重煙突の高い安全性
燃焼排気ガスは260℃前後ですが、煙突火災時の燃焼温度は1180℃にも達します。木材の発火温度は400~470℃なので、煙突火災は容易に建物火災につながるおそれがあります。断熱材入り二重煙突は、仮に煙突内部の温度が1180℃に達したとしても、外部表面温度は250℃前後にとどまるため、木材の発火温度に達することはありません。
また、木材を80℃前後の環境下に置き続けると、低温炭化現象を起こし発火しやすい状況になります。しかし断熱材入りの二重煙突では、煙突外部の表面温度は60℃前後(外気温20℃の場合)なので、周囲の木材が低温炭化を起こすことはありません。多少のコスト高にはなりますが、安全のためには、この断熱材入り二重煙突を選びましょう。
燃焼時のドラフトは、室内外の気圧の差、煙突の高さが微妙に影響します。「燃えない」「煙が逆流する」などの問題を生じないために、煙突はストーブ本体から、曲がりなどを最小限に抑え、床面より垂直に5メートル以上立ち上げます。煙突トップは煙の逆流などの原因となる風圧帯(風の影響により室内の気圧や煙突のドラフト圧よりも気圧が高くなるエリア)を避けて、屋根の棟より高く突き出させることが基本です(下図)。ただし、風圧帯は接近した隣地建や高木などによって発生する場合もありますので、周囲の環境も考慮して計画しましょう。
煙突の高さと位置(米国NFPA規格による)
本体の設置と煙突の取り付け
薪の焚き方や使用する薪の種類、乾燥度によっても異なりますが、煙突掃除は毎年シーズンオフに取り付け工事店に依頼するか、初めに専門家に掃除方法を教えてもらえば、翌年からは自身で行うことも可能です。
安全面のみならず、薪ストーブの性能機能を十分に発揮させるために、煙突の占める役割は大きく、ある意味においては、薪ストーブ本体以上に重要な設備とも言えるでしょう。
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