地域の伝統建築技術を受け継ぐ、大工棟梁の家
地域の伝統建築技術を受け継ぐ、
大工棟梁の家
建主の小川さんは滋賀の安土建築工房の大工社員。
同社の西澤由男社長と出会い、入社して15年が経つ。
知識を深め、1軒1軒経験を積み上げてきた大工人生。
自邸の建築を機に、新たな家づくりの展望が広がっていく。
滋賀県近江八幡市 注文住宅 安土建築工房 小川邸
設計・施工=㈱安土建築工房 写真=酒谷 薫
就職のタイミングで出会ったのが滋賀の安土建築工房。無垢の家を建てることに心が動いた。「とりあえず会社に電話をしました。採用する時期ではないんやけど『会うだけ、会うか』と社長に言われて。『来年まで待てるか?』と聞かれたんですが、待てませんと正直に言いました(笑)。そうしたら2週間後に採用通知が送られて来て」と小川さん。入社が決まり滋賀に引っ越し、この道40年の熟練大工の指導のもと見習い生活が始まった。以来、建築大工一筋で15年、現在に至る。
新居を建てるきっかけは急に訪れた。愛知県で一人暮らしをしていた母が妹夫婦と同居することになり、実家を家仕舞いすることになったのだ。奥さんと子ども二人の4人家族の小川さん。「自分の落ち着く拠点が欲しい」と家づくりを決断。土地は会社の敷地を良心的な価格で購入できることになった。
小川邸の設計図面は、大工である小川さんを中心に、設計の竹内賢治さんがフォローしながらつくり上げた。設計の意図は「嫁さんの友人が家に遊びに来るので、人が集まってゆっくりできるような場のイメージを考えました。直接伝えてはいないですけど」。「はじめて聞きました」と奥さんは、小川さんの言葉に驚いた表情を見せた。設計については「掃除機の収納場所など細部のちょっとした要望を伝えたぐらい。主人が建てる家なので、自分の好きなように建てて欲しいと思いました」と奥さん。
小川さんは人が集まる家ということ以外に、「梁を見せる勾配天井で落ち着いた空間」をめざした、と話す。こだわりはスキップフロアで繋がるダイニングとリビング。家事動線をシンプルにしたかった、と小川さん。座卓とダイニングスペースの目線の高さを合わせ、「実家でもソファの床に座っていることが多かったので、二つの居場所をつくりました」。
庭の緑を室内に取り込むためのリビングの大きな掃き出し窓も、伸び伸びとした居心地を生み出した。「リビング・ダイニングをまっすぐつなぐと、間口が2間ぐらいしか取れないので、斜めに曲げて扇型にしました。施工面では手間が増えるんですが、光を取り入れやすくなりました」(小川さん)。角度を付けたことによって、やわらかい光がリビング空間を満たしている。
木造建築に対する
思いで繋がる
自邸をつくってみての感想を「今までは大工として家をつくる側だったが、住んだことによって、住み手側の望みが見えてきた」。「この経験を生かし、さらにいい家をつくれたらいい。言葉で説明しなくても、入った瞬間に感動するような家がいいですね」と、ひたむきに家づくりを模索する。
安土建築工房の西澤由男社長は、大工の手仕事を残すことに尽力している。その理由の最たるものとして、祖父の代、徒弟制度から始まったこの家業を大工ではない自分が終わらせることはできないという気持ちがある、と話す。「自然の摂理の中、この国で暮らす私たちにとって、最も理にかなっているのが木造建築」と西澤社長。
木造建築を後世に残す営みの中には、住む人に思いを馳せ、建築への思いで繋がる大工との信頼関係がある。
所在地 | 滋賀県近江八幡市 |
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家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
面積 | 敷地 186㎡ 延床 102.32㎡ |
竣工 | 2017年4月(工期 2016年10月~2017年4月) |
設計・施工 | ㈱安土建築工房 |
構造形式 | 木造軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム 鋼板横葺き 軒天井=杉板厚30㎜、ウッドロングエコ塗装 外壁=杉板縦張り塗装(ウッドロングエコ)仕上げ、モルタル下地 マヂックコート塗り |
主な内部仕上げ | 天井=杉板厚30㎜柿渋仕上げ プラスターボード9㎜ 下地漆喰塗り等 壁=檜板厚12㎜ 柿渋仕上げ プラスターボード 9㎜下地漆喰塗り等 床=杉無垢板厚15㎜柿渋・ハードクリア仕上げ 檜無垢板厚15㎜柿渋・ハードクリア仕上げ |
株式会社 安土建築工房
〒521-1311 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦3300
安土建築工房は、滋賀で木の家の設計・施工・リフォームを手掛け、
「日本の伝統技術の継承」と「風土に根ざした建築」をコンセプトに
21世紀の本当にあるべき暮らしの姿、お客様が満足し長く愛着を持って住める家づくりを追求しています。
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