伝統工法を次世代に継ぐモデルハウス兼ギャラリー
伝統工法を次世代に継ぐ
モデルハウス兼ギャラリー
吉野の杉や檜を使った家づくりを行う倭人の家建築。
昨秋オープンした同社のモデルハウスは、
建築家・工務店・職人の力を結集して実現したものだ。
伝統工法による美しい空間は、地域の評判を集めている。
奈良県五條市 倭人の家建築 モデルハウス兼ギャラリー
設計=安田勝美 施工=㈲倭人の家建築 写真=酒谷 薫
地域に開いた場として
木の家のよさを伝える
五條市の街道沿いに建つ、白壁に瓦屋根の平屋建て。約5坪と小ぶりな佇まいながら、凛とした雰囲気のこの建物は、倭人の家建築のモデルハウス兼ギャラリーとして建てられたものだ。木組や木摺り下地の左官壁といった伝統的な工法や端正な建具は尊重しつつ、ガラスやタイルなど素材を効果的に配することでモダンな印象を与える。
倭人の家建築の永井康雄さんは「ここ大和地方は、吉野杉・吉野檜を中心とした豊かな木材に恵まれています。倭人の家建築では、その材を生かし、伝統ある建築様式を受け継ぎつつ、今の暮らしに調和する家づくりをめざしています。その一環として、モデルハウス兼ギャラリーを建設しました」と話す。きっかけは、建築家の安田勝美さんとの出会いだった。「洗練されたデザインに感銘を受けました。安田さんの設計、良材、腕のよい職人が揃う今こそがチャンスだと思い、理想を追求しようと考えたのです」。
永井さんをはじめとする倭人の家建築のメンバーの思いを聞いた安田さんは、基本設計の依頼を快諾。「幅3間奥行き2間ほどの小さな建物ですが、通りかかった人が思わず入りたくなるような雰囲気をめざして開放感を大切にしました。地域の皆さんに本物のよさに触れていただくサロン的な場になればと願っています」(安田さん)。
大工・建具・左官の
伝統技が随所に光る
永井さんが腕を見込んだ職人は、大工の田中正則さん・友隆さん父子、左官の松本善充さん、建具の和田崎充也さん。永井さんが「今回はとにかく昔ながらの工法にこだわりました」と話すように、モデルハウス建設は、それぞれのもつ技を継承する場ともなった。
田中さん父子は、釘などの金物をいっさい使わない、車知栓(しゃちせん)と込栓(こみせん)による家づくりを行った。正則さんは「最近はここまで伝統工法に徹底した家はないので、息子にとっていい勉強の機会をいただきました」と振り返る。友隆さんは半年かけてすべての材を手刻みした。「どの木をどう生かすかといった見立てが難しかった。父に聞きながら、一つひとつ進めていきました」と話す。
松本さんは、壁の下地を石膏ボードではなく木摺りとし、さらに布海苔を煮て漆喰に混ぜたものを3層に塗り重ねた。そして和田崎さんは、障子や雨戸などの建具類を、無垢の木を使って昔ながらの方法でつくりあげた。二人は「一人でも多くの人に伝統の美しさを体験していただきたい」と声を揃える。
人びとの力を結集して生まれた空間は、今後、地域に本物の木の家の素晴らしさを発信していくことだろう。
所在地 | 奈良県五條市 |
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面積 | 敷地 100㎡ 延床 16.56㎡ |
施工 | 2017年10月(工期2017年5月~10月) |
設計 | 安田勝美 |
施工 | ㈲倭人の家建築 |
構造形式 | 木造軸組 |
主な外部仕上げ | 屋根=三州純いぶし瓦 軒天井=吉野杉板 外壁=本漆喰 |
主な内部仕上げ | 天井=吉野檜、登り梁の上吉野杉板 壁=本漆喰 床=吉野檜、無地フローリング |
有限会社 倭人の家建築
〒637-0014 奈良県五條市住川町888-22
古くからの伝統ある建築様式を受け継ぎ、
新しい暮らしにマッチするデザインと機能性を考え、かつ地域の材を使い世界に一つしかない
建築した者の顔がはっきりと見え長く暮らしていける家づくりに努めています。
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