風土と暮らしを紡いだ美しい福島の家
福島を愛する大工が建てる
風土と暮らしを紡いだ
美しい福島の家
福島の地域工務店が、
震災を乗り越えて完成させたモデルハウス。
そこには、地元を心から愛し、
この地に800 棟以上の家をつくってきた
大工社長の思いが込められている。
福島県郡山市 モデルハウス 増子建築工業
設計=泉幸甫建築研究所 施工=㈱増子建築工業 写真=相原 功
福島復興のために力を尽くす増子建築工業。同社が建てたモデルハウスを訪ねた。郡山市の開成山公園にほど近い土地に建つこの家は、2011年に完成したモデルハウス「杢(こだくみ)」と対になっている。
「杢」の黒い外観に対し、こちらは洒脱な赤茶色の外観が印象的。比較的部屋数の多い「杢」に対して、よりコンパクトな家になっている。「延床30坪で、若い夫婦と子ども一、二人で住むことを想定しています。自然素材をふんだんに使いながら、シンプルでデザイン性も高く、というのがコンセプトです」と増子建築工業の増子則満さん。
塗り壁の質感が美しい玄関を抜けて中に入ると、吹き抜けが伸びやかなダイニング・キッチンが広がる。見上げれば2階天井の立派な梁組が頼もしい。ダイニング・キッチンと隣り合う二間続きの和室リビングは、一間が板の間、一間が床の間を備えた畳敷きに。部屋の仕切りはすべて障子で、壁に引き込むことで12畳の大きな空間として使える。
「部屋の用途を限定しないことで、住む人が暮らしに合わせて自由に使えます」と、両モデルを設計した建築家・泉幸甫さん。増子建築工業の持つ伝統的な大工技術を生かしつつ、1階和室では部材を減らしてすっきり見せるため、梁と鴨居を一体に。また、窓枠の見付け(正面から見た厚み)を12ミリ、チリ(壁からの出幅)を3ミリと薄くし、細部まで美しい空間をつくり出した。
福島人のための家
二間続きの和室。これは福島の伝統的な生活文化にも沿うと増子社長は言う。「郡山では結納や葬式、納棺を家でやる人がまだまだ多いので、こういう部屋が必要なんですよ」。「伝統とデザイン、そして暮らし方をプラスして家づくりを考えてもらいたいです」と則満さんが続ける。こうした発想は、地域に根づく工務店にしかできない。このモデルは福島の人が、福島で暮らしていくための家——。建築中、震災で物資調達も遅れる中で完成させたこの家にはそんな気持ちが込められている。
設計者の泉さんも想いは同じだ。泉さんは以前から地域工務店と協働することで、画一的なハウスメーカーの家ばかりになってしまった日本の町並みを美しく変えたい、そして家づくりを通じて地域の職人が持つ技術を次代に継承したいと訴えてきた。その考えは、建築家がどのように震災とかかわっていくのかとも重なる。「地域の人がその手で復興を担うというのが大切だと思うんです。県外から大企業が入ってきてスピードや効率だけで復興が進み、地域文化が失われるのが心配です。そんな視点を持って復興のお手伝いができればと思っています」
所在地 | 福島県郡山市鶴見坦1-89-1 |
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面積 | 敷地 171.77㎡ 延床 99.05㎡(1階 66.83㎡ 2階 2.22㎡) |
竣工 | 2011年4月(工期2010年8月~2011年4月) |
設計 | 泉幸甫建築研究所(担当:酒井宏明) |
施工 | ㈱増子建築工業 |
構造形式 | 木造在来軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板 外壁=杉板張り |
主な内部仕上げ | 天井=構造材現し、化粧天井壁/左官仕上げ 床=1階桜(厚15㎜)、2階松(厚15㎜) |
株式会社 増子建築工業
〒963-8061 福島県郡山市富久山町福原字東内打5-1
地元ふくしまの木で、住みよい、心地よい家を造る。
増子建築工業は、家づくりを通して
地域のみなさまの暮らしを豊かにしていきます。
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