居心地のよさとデザイン性をかなえた、エコな住まい

群馬県高崎市 小林建設 ギャラリー「hinosumika」
関東

居心地のよさと
デザイン性をかなえた、
エコな住まい

気持ちよい住まいとは何か——。それは居心地よいデザインであり、温熱環境でもある。
太陽エネルギーで床暖房や発電を行うOMソーラーを搭載し、かつ自然の恵みも取り入れる。
群馬・埼玉に拠点を置く小林建設が、新しいモデルハウスを通じて追求する住まい像とは。

群馬県高崎市 小林建設 ギャラリー「hinosumika」
設計=田中敏溥建築設計事務所+㈱小林建設 施工=㈱小林建設 写真=輿水 進(外観写真=西川公朗)

どこにでもありそうで
どこにもない心地よさ

2017年5月、群馬県高崎市の閑静な住宅街に、群馬・埼玉に拠点を置く小林建設のモデルハウス「ギャラリーhinosumika」が竣工した。

社名を謳う派手なのぼりの類は立てていない。しかし道往く人はおのずと足を止め、しげしげとその佇まいに見入る。それは、青空に映えるシンプルな切妻屋根や、びっしりと埋まった薪棚、青々と葉を茂らせる雑木からうかがいしれる、「何げない心地よさ」をこのモデルハウスが醸し出しているからだろう。どこにでもありそうで、どこにもない。そんな上質な心地よさを、このモデルハウスは体現している。

設計を手がけたのは、建築家の田中敏溥さん。今回は、小林建設の小林伸吾社長をはじめとする設計士5名とチームを組んでデザインを詰めていった。小林社長が思い描いたのは、「地域に根ざすことの心地よさ」というコンセプト。

それは明快でありながら、その実、 深淵な命題でもある。間取りや空間構成のデザインや暮らしの豊かさとともに、夏冬ともに厳しい気候の群馬という土地において、エアコンなどの機械にできるだけ頼らずに快適に過ごせるか。「地域工務店であることを突き詰めると、おのずとこうした答えが導かれたのです」(小林社長)。

当たり前のことを
すべてにおいて貫く

ただ、それを形にするのは容易ではない。「素材選びや空間デザインはもとより、家具などのしつらえ、庭の眺め、暮らしの愉しみ……一つひとつとってみれば、当たり前のことかもしれません。けれどもこれら当たり前のことすべてを、一つの〝住まい〟において貫けないものかと考えました」(小林社長)。

そのために今回は、設計チームに加えて家具・インテリアデザインは小泉誠さん、造園は小林賢二さんと協働。「毎日、肌に触れる木の家具や、四季の移り変わりをあらわす庭。何げない日常こそ豊かなものでありたいという願いを込めました」と小林社長は語る。小泉さんには、庭に建つ6畳の秘密基地「舎庫」の設計も依頼。書斎や家カフェ、アトリエなどになる、ちょっとした非日常を味わうことができる庵のような建物だ。

地域工務店だから
打ち出せたパッシブZEH

そしてもう一つ注力したのが、温熱環境とエネルギー。同社は長年にわたりOMソーラーを採用しているが、ここでは太陽エネルギーでの採暖のみならず太陽光発電による創エネも行うことができる「クワトロソーラー」を搭載。さらにエネルギーロスを削減し、自然の営みによって快適さを保てるよう、高い断熱性能とともにパッシブデザインも熟考した。現在の家づくりでは、住まいのエネルギー収支をプラスマイナスゼロにする「ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)」としての性能が求められるが「ギャラリーhinosumika」は、機械設備に依存せずにZEHを実現する「パッシブZEH」という新しい概念を打ち出している。

吹き抜けのあるリビング・ダイニングは、広いデッキ越しに庭の景色を切り取る大きな窓を設け、断熱性能の高い木製サッシを採用。冬期の日中はOMソーラーに加え、薪スーブの暖気が家中を温める。深い庇は、夏至冬至の太陽高度にも配慮した寸法で、ダイレクトゲインにも期待できる。また吹き抜けの2階部分には障子を設け、開け閉てすることで暖気の流れをコントロールするなど、昔ながらの日本の家にこめられた知恵も、随所に生かしているのが特徴だ。

新しい機械設備に依存するのではなく、温故知新の知恵と技術で、時代のニーズに対して自分たちでなければできない答えを出す。「地域工務店としての原点に立ち返りながら、新しい視点を打ち出していければ」と語る小林社長。「いちばん嬉しいのは近隣住民の方が、〝ここにこんないい家が建ってくれて嬉しい〟とおっしゃってくださることですね」と顔をほころばせる。

「いい木の家を、正直に、ていねいにつくっていきたい」。そんなシンプルな思いが、ベーシックだけれども新しさを打ち出したモデルハウスを導いた。

 

平面図

 

所在地 群馬県高崎市矢中町20-8
家族構成 4人(想定)
面積 敷地 649.04㎡
延床 178.11㎡(1階111.95㎡ 2階66.16㎡)
設計 田中敏溥建築設計事務所(担当:田中敏溥、木下治仁)
㈱小林建設(小林伸吾、亀倉 治、浦 正人、大和正規、小林伸之輔)
施工 ㈱小林建設
構造形式 在来木造住宅
主な外部仕上げ 外壁=そとん壁
屋根=ガルバリウム鋼板
軒天井=杉羽目板
主な内部仕上げ 天井=杉羽目板、土佐和紙
壁=珪藻土
床=檜縁甲板、杉縁甲板(うづくり)

 

チルチンびと 94号掲載|電子書籍でご覧いただけます

 

株式会社 小林建設
〒367-0212 埼玉県本庄市児玉町児玉2454-1
 
創業から約90年、埼玉県北部と群馬県南部を中心に、深く地域に根ざした家づくりをしています。
「自然素材」・「自然エネルギー」の力を存分に使う五感にやさしい家。
柱や梁の美しさを見せる現し工法。
長く住んでも飽きが来ず、ご家族の成長と共に経年変化を楽しめる家づくりを得意としています。

 

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

Optionally add an image (JPEG only)