都市の住まいにも、薪ストーブの炎を
都市の住まいにも、
薪ストーブの炎を
兵庫県をベースに家づくりを手がける地域工務店。
2007年以来、タッグを組む泉幸甫氏が設計した
新しいモデルハウスには、広間の中心に薪ストーブがあった。
兵庫県宝塚市 平尾工務店 モデルハウス「宝塚Ⅱ」
設計=泉 幸甫 with 伊藤誠康・伊藤嘉浩 施工=㈱平尾工務店 写真=相原 功 文=上野裕子
美しい檜の床に、漆喰の壁。天井高3メートルの広間に入ると、まず目に飛び込んでくるのが薪ストーブだ。あかあかと燃える炎は、建築家が設計した端正な空間に、いっそうの活気を与える。
省エネ対策の一環として
モデルハウスに薪ストーブを導入した経緯をうかがいに、平尾工務店の平尾博之社長を訪ねた。すると平尾社長は「今回のモデルハウスのテーマは、“省エネルギー”なんです」と話し始めた。「これまで取り組んできたのは、自然素材とデザインの両立。それに加えて省エネルギーに取り組んだ背景には、『現代の家づくりには、環境配慮が欠かせない』という思いがあったからなんです」。
この思いを実現すべく、まずは 2010年に自社の社屋を省エネ仕様に変更した。6キロワットの太陽光発電パネルを設置したほか、照明やエアコンを省エネタイプのものに、サッシもペアサッシに変更。その効果は大きく、5〜7月の電力使用量でみると、前年比23〜25 %もの削減につながったという。こうして効果を実感したことから、モデルハウスでも省エネルギーをテーマとして掲げることになったのだ。
興味深いのは、ハイテクとローテクを組み合わせることで CO2 排出低減につなげようという考え方。具体的には、太陽光発電パネル設置のほか、屋根160ミリ、壁100ミリの厚さで断熱材を使い、開口部の外部サッシはすべてペアガラス仕様とし、さらに深い軒や小庇をとる、障子を入れるなどの工夫をしている。そして住宅ならではの設備として、薪という再生可能なエネルギーを利用した薪ストーブを導入した。
炎の楽しみを
より多くの人に
もともと、「都市型住宅にも自然を」をモットーにしてきた平尾工務店。これまでも同社で家を建てる人の3〜4割が、薪ストーブを設置してきた。都市部の暮らしでは薪の調達など困難も多いのでは? と聞くと、「薪ストーブの楽しみ=薪割りの楽しみ、とは考えていません」と平尾社長。気負うことなく、家族や友人と炎を囲む良さを味わってもらいたいと話す。そのため、薪ストーブのメンテナンスや薪の調達に関しては、信頼できるストーブの代理店にお願いしているとのこと。
こうした平尾社長の考えは、自らも自宅で薪ストーブを楽しんでいる経験に裏打ちされたもの。「思い切ってリビングに設置してみたところ、非常によかった。自然と人が集まってくるし、家族も冷え性が治ったと喜んでいます」。
都市部の住宅での薪ストーブという観点では、設計者の泉幸甫氏も、 東京都区部の自邸に薪ストーブを設置しており、火のある暮らしを積極的にすすめている。「薪ストーブと自然素材の住まいとは、相性がいい。火のある暮らしを提案する機会を増やす意味でも、地域工務店のモデルハウスを設計する際には、できるだけ薪ストーブを入れるようにしている」と語ってくれた。
地域工務店と建築家――。火の良さを知り尽くした両者のコラボレーションによって、炎の楽しみがより幅広い層に届けられていくのだろう。
所在地 | 兵庫県宝塚市中筋4-9-48 |
---|---|
家族構成 | 夫婦+子ども2人(想定) |
面積 | 敷地 102.19㎡ 延床 105.03㎡(1階56.55㎡ 2階48.48㎡) |
竣工 | 2010年11月(工期 2010年7月〜11月) |
設計 | 泉 幸甫、伊藤誠康、伊藤嘉浩 |
施工 | ㈱平尾工務店 |
構造形式 | 在来木造軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板板葺き 軒天井=杉板 外壁=ラスモルタル左官仕上げ、板張り |
主な内部仕上げ | 天井=杉板、漆喰 壁=漆喰 床=檜フローリング |
株式会社平尾工務店
〒673-1311 兵庫県加東市天神341番地
家族がずっと生きていく住まいだから。
平尾工務店は、暮らしたいと思える家造りを大切にしています。
これまでたくさんの家族に出会い、たくさんの家を建ててきました。
その中で、「人が求める家は何だろう」と考えた回数は幾多にも及びます。
だからこそ生まれた、平尾工務店ならではの家づくり。
私たちはこの思いを大切に、住まいづくりに携わっています。
この記事へのコメントはありません。