日光街道の町並みになじむ糸屋格子の町家
日光街道の町並みになじむ
糸屋格子の町家
栃木県日光市 注文住宅 無垢杢工房 イケダ S邸
設計・施工=無垢杢工房 ㈱イケダ 写真=五十嵐秀幸 文=上野裕子
1999年にユネスコ世界文化遺産に登録された、日光東照宮。その東照宮とJR日光駅を結ぶ日光街道では、数年前から歩道の拡幅および無電柱化工事が行われており、それにともない街道に面する家々の建て替え工事も進んでいる。そのうちの1軒が、無垢杢工房 ㈱イケダが設計・施工を手がけたS邸だ。
同社は、同じ日光街道沿いで、築120年の古民家の移築再生を手がけ(設計=安藤政英)、栃木県マロニエ建築優良賞を受賞した実績がある。池田社長は「Sさんは、歴史ある町並みにふさわしい家を建てたいと、弊社に相談に来られたのです」と振り返る。
そこで同社が提案したのが、「糸屋格子」と呼ばれる格子を取り入れた外観の町家。「糸屋格子は、糸をはじめ紐や呉服など繊維を扱う店に用いられてきた格子です。Sさんはもともとこの門前町で呉服屋・洋品店を営んでいたので、糸屋格子を玄関戸、出格子、出庇に取り入れ、外観のシンボルとしました」。
繊細な糸屋格子の建具は、もちろん無垢杢工房 ㈱イケダが自社で挽いた材でつくったオリジナルで、建具には狂いにくい柾目材のみを用いているという。設計や意匠の面でも、同社の素材や技といった強みが反映されているのだ。
オールとちぎ材で
木の魅力溢れる 家を建てる
もとが商家だったため、間口3間半で奥に長い、まさに町家のつくりのS邸。玄関を入ると、広い土間が広がり、その横には客間が、奥にキッチンやダイニングといった生活空間が広がる。
取材時は引っ越し前の家具などが入っていない状態だったが、真壁づくりの漆喰壁と梁をすべて現しにした天井が、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。池田社長は「町家なので、木が見える真壁にしました。漆喰壁の下地は木摺り。木摺り材も当社で挽いた檜で、砂漆喰を2回塗った上に漆喰で仕上げています」と話す。晃徳さんも「木を表に出すことで、和の趣を醸し出すとともに、メンテナンスがしやすくなり、家が長持ちするメリットがあります」と頷く。
さらに、S邸に使われている木は、すべてが栃木県産の「とちぎ材」だ。桁は80年生の檜、柱と梁は檜、床は30ミリ厚の杉を使っている。県でもとちぎ材を使った家づくりを、建主への補助制度や、とちぎ県産材木造住宅コンクール(平成28年度は無垢杢工房 ㈱イケダが最優秀賞を受賞)などで支援しており、県産材への理解も深まりつつあるという。晃徳さんは「我が社が手がける家のほとんどがオールとちぎ材。多くの人に地元の木のよさを知っていただき、とちぎ材のよさを生かした家づくりに取り組むことが使命だと考えています」と力強く語った。
栃木県木材産業担当者と
とちぎ材について語る
栃木県では、とちぎ材の需要拡大のため補助制度やコンクールのほか、地域材を使った家づくりにおけるCO2削減評価システム開発などに取り組んでいる。県の林業木材産業課の大野英克さん(写真右)は「とちぎ材のよさを県外にも広めることが課題。さらに若い事業後継者の連携に期待しています」と話す。これを受けて晃徳さんは「林業、製材、工務店、設計者まで含めて、若い世代がつながることが大事だと思います」と応えた。
所在地 | 栃木県日光市 |
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家族構成 | 母+夫婦+子ども2人 |
面積 | 敷地 311.66m² 延床 138.28㎡(1階78.66㎡ 2階59.62㎡) |
竣工 | 2017年9月(工期2017年2月~9月) |
設計・施工 | 無垢杢工房 ㈱イケダ |
構造形式 | 木造軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板葺き 軒天井=サワラ羽目板 外壁==漆喰(原料:佐野市葛生産の消石灰)、金属サイディング、サワラ下見板 |
主な内部仕上げ | 天井=サワラ羽目板 壁=漆喰 床=杉縁甲板、畳 |
無垢杢工房 ㈱イケダ
〒321-2116 栃木県宇都宮市徳次郎町306-3
無垢杢工房は、「地球に根ざす家づくり」を通して地域循環型社会に貢献する工務店の組織です。
その基本的な考えは、産地の明らかな素材で、
設計者、工務店、大工、職人の顔が見える、安全で良質木の家づくりの実現です。
私たちの取り組みは、地球に根ざした住文化の新たな創造です。
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