次世代へつなぐ木の香りとぬくもりの家
次世代へつなぐ木の香りとぬくもりの家
これまで暮らしてきた、
築80年の家を建て替えることになった家族。
地域主義工務店と設計事務所が力を合わせて
つくりあげたのは、今まで以上に長く住み継げる家だ。
東京都杉並区 注文住宅 大丸建設 O邸
設計=㈲田中敏溥建築設計事務所 施工=㈱大丸建設 写真=米谷享
東京・杉並区のとある駅、にぎやかな商店街を抜けた静かな住宅街。路地を入った旗竿敷地にO邸は建つ。玄関に迎え入れられると、ふわっと杉の香りに包まれた。玄関ホールの扉を開けると、南側の開口からの光が明るい家族室と一続きの北側の和室。和紙張りの天井に反射した光が、室内をやわらかく照らしていた。
代々住み継げる家づくり
以前住んでいた家はOさんの奥さんの祖父が建てた、およそ築80年の建物だった。傷んできたのでリフォームも検討したが、子どもや孫たちが将来住むことも考え、建て替えることにした。Oさんは、「新しい家も、最低同じくらいはもつ家にしなければ」という使命感にも似た気持ちを抱いたという。また、アトピー体質の息子さんのことも配慮し「自然素材で住み心地のいいものにしたい」と友人に相談。紹介されたのが、建築家・田中敏溥さん、そして『チルチンびと「地域主義工務店」の会』の「㈱大丸建設」だ。
同社は明治時代の大工から始まり創業130年余。東京多摩地区を中心に、自然素材を使い、伝統構法にも秀でた大工が木の家をつくる工務店だ。「代々住み継げる家づくりと、建てた後の付き合いを大事にすることがうちのモットー」と話す同社の安田佳正さん。取材にうかがった日も、Oさんと住み心地などについて話し合っていた。
ていねいな仕事で温かい時間を
田中さんは、今回が初めての同社との仕事だったが「新建材を使わず、徹底したシックハウス対策をする『チルチンびと仕様の家』を建てている大丸建設。そのノウハウと、高い技術力は大変頼もしかった」と語る。O邸の敷地は準防火地域。通常木造建築では、延焼防止対策として軒裏に遮熱性のある珪酸カルシウム板などを張り、木を現しにした庇は少ない。しかしO邸は、軒裏に30ミリ厚の野地板や、45ミリ厚の面戸板を使用するなどし、木造での防火構造の基準をクリア。玄関扉もスチール製に木を張り防火設備仕様とし、各所で木の質感をしっかりと感じられるつくりだ。これも、木を見せたいという双方の思いの表れであろう。
建築中、現場近くに仮住まいをしていたOさん一家。「昔ながらの大工仕事を見ることができて楽しかった」とご主人は話す。大工が鉋で材木をけずり、実際につくりあげる工程を見たことによって安心と信頼が生まれたという。
「住み始めてつくづく思うのは木が温かいな、ということ。遊びに来た孫も家中走り回ってますよ」とうれしそうに話す夫妻。思い出の宿る家具もぬくもりを添え、新居はこれまで以上に住み継げる家になった。
所在地 | 東京都杉並区 |
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家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
面積 | 敷地 150.11㎡ 延床 133.18㎡(1階 62.45㎡ 2階 70.73㎡) |
竣工 | 2011年7月(工期 2010年12月~2011年7月) |
設計 | ㈲田中敏溥建築設計事務所 |
施工 | ㈱大丸建設 |
構造形式 | 木造在来工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板 軒天井=レ杉板厚30㎜ 野地板現し 外壁=スーパー白洲そとん壁 |
主な内部仕上げ | 天井=土佐和紙張り 壁=漆喰塗り 床=杉板厚30㎜ |
株式会社 大丸建設
〒206-0801 東京都稲城市大丸71-2
多摩に根ざして150年。
大丸建設は、明治の宮大工から受け継ぐ伝統の技で、
この地の風土に合わせた住まいづくりをご提案しています。
健康や環境を配慮した自然素材を使用しながら「家族のこころがつながる家」を
お客様とご一緒ににつくりあげていきます。
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