山に抱かれ海を望む地で農ある暮らしを謳歌する
山に抱かれ
海を望む地で
農ある暮らしを謳歌する
未来工房の社員として、家づくりに携わってきた林善嗣さん。
定年を機に、兼業農家の実家を手伝いつつ、
ライフワークである家具づくりを再開した。
その舞台となるのは、未来工房とともにつくりあげた、新たな住まいだ。
福岡県福岡市 注文住宅 未来工房 林邸
設計・施工=㈱未来工房 写真=米谷 享 文=上野裕子
博多湾を望む立地を生かした
景色と一体になるプラン
林さんの家が建つのは、博多湾を望む高台の地。「祖父の代に購入した土地で、父の代にはミカンをつくっていました。そこに15年ほど前に、家具工房を建てたのです」(林さん)。エンジニアだった林さんは、40代で家具職人をめざして脱サラ。自分で建てた工房で家具づくりをしていたが、好きなものをつくっていても生計を立てることは厳しく、一旦廃業を決意。そこで勤めたのが、地域に根ざし、自然素材の家づくりを行う工務店・未来工房だった。「木にかかわる仕事がしたいと考え、応募しました。お客さまの家づくりのお手伝いをするのはとても楽しく、気づいたら定年間近になっていました。数年前に妻を亡くしたこともあり、定年後はこの場所に、農業ができて家具もつくれ、人が集える場をつくりたいと考えるようになったんです」。
家づくりにあたって譲れなかったのは、広い土間があること。林さんは「設計士に、百姓の土間のある家だと伝えました。土間はいろいろなことができる場で、餅つきができるくらい開放的でないといけない。流しと竃も必要だということで、シンクと薪ストーブを設置しました」と話す。また、農作業後に帰宅した際、まずシャワーを浴びられるようにすることなど、この家での動線に合った間取りを希望したという。
こうして完成したのが、博多湾を一望する絶好の立地を生かした住まい。海沿いの道から数十メートル上がった敷地に建てた住まいは、各室から海を眺められるように配慮した。また土間をぐるりと囲むようにL字型に設けたテラスは、住まいの内と外をゆるやかにつなぐ中間領域の役割を果たす。「畑仕事の後、テラスのベンチに座って景色を眺めるひと時が楽しみです」(林さん)。
自然の恵みに感謝しつつ
新たな人生の一歩を踏み出す
この家で暮らすようになった昨年からの暮らしは、未来工房のスタッフとして週に1、2回出社しつつ、近所にある実家の田畑や果樹園を手伝う日々だという。「実家でつくっているのは、ミカン、梅、ブドウ、お米など。私の意向で無農薬栽培に挑戦していますが、特に果樹は難しく苦戦しているところです」(林さん)。一方、野菜については、実家の畑で自家消費分をつくっているほか、休耕畑で無農薬・無肥料の野菜づくりに挑戦するとのこと。「この敷地でも、春には筍やミョウガ、山菜、夏から秋にかけてはショウガや山芋などもとれます。肉や野菜も地域でとれたものを食べられますし、里山の自然の恵みや地元の海の幸をたくさんいただけます。」(林さん)。
1年を通して暮らしてみての感想を聞くと「できるだけ自然に寄り添う暮らしがしたかったので、エアコンを使わない生活をめざし、間取りにも配慮しました。冬は薪ストーブだけで家中ポカポカになります。夕方帰宅して薪ストーブに火をつけると室温は21℃くらいになります。寝る前に火を消すと、朝起きたときに17℃くらいで暖かいままなんです。一方、夏は風通しがよいので爽やかに過ごせます」と、住み心地は上々とのこと。
今後は、果樹園や田んぼを生かして果樹づくりや米づくりの体験企画も考案中だという。林さんは「未来工房のスタッフには、お客さまをどんどんここに連れてきてって言っているんです。これまでに2回ほど、社員やお客さまを招いてバーベキューをしましたが、これからはそうした機会を増やしていきたいと思っています」と抱負を語る。
住まいという新たな舞台で始まった、林さんの第二の人生。今後は多くの人と里山の自然を分かち合い、さらに充実した暮らしが営まれていくことだろう。
所在地 | 福岡県福岡市 |
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面積 | 敷地 89.43㎡ 延床 109.30㎡(1階 62.93㎡ 2階 46.37㎡) |
竣工 | 2019年9月(工期 2019年1月~9月) |
設計 | 松本典生(Loid Works) |
施工 | ㈱未来工房 現場監督:原口高誠(未来工房)大工棟梁:工藤信弘(工藤工務店) インテリアコーディネーター:金井瞳(未来工房) |
構造形式 | 木造軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=三州野安 セラフラット防災瓦 外壁=天然スイス漆喰カルクファサード、国産杉横張り |
主な内部仕上げ | 天井=八女杉 屋根板現し(1・2階とも) 壁=天然スイス漆喰カルクウォール、レッドシダー張り(浴室)、一部紙クロス(オガファーザー+水性塗料デュプロン、主に2階) 床=八女杉、ハネダ化学「弥生」(土間スペース) |
株式会社 未来工房
〒830-0047 福岡県久留米市津福本町731
未来工房は、いつもの暮らしを、生きていることそのものを幸せだと思えることこそが
本当の豊かさだと考え、家づくりをしています。
そんな豊かさを感じられるのは、石油化学の工業製品で作られる家ではなく、
足音も手ざわりも心地よい本物の素材でつくる、心くばりに満ちた手しごとの家。
何の変哲もない豊かな日常をつくるために、
私たちはこれからも、本物の自然素材で家を作り続けます。
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