素材と技巧上質が溶け合う和の住まい

素材と技巧
上質が溶け合う
和の住まい
福岡県の未来工房は、九州の風土に合わせた
自然素材の住宅を手がける地域工務店だ。
素材にこだわった家づくりには、職人との協働が不可欠。
同社の住宅事例を紹介する。
福岡県 注文住宅 未来工房 宮木邸
設計・施工=㈱未来工房 写真=西川公朗
- 旅館さながらのアプローチ。ファサードは福岡県内にあった「ゴマカフェマルニ」を参考にした。
- 美濃古窯のタイルや欄間、玉砂利でモダンな安らぎを添えた。
宮木邸は、福岡県の住宅街の一角にある。漆喰塗りに杉の腰板を張った外観。露地に見立てた飛び石の前庭を行くと、那智黒の寄せ付けと格子の引戸が迎え入れる。「なんのお店ですか」、通りがかりのご近所さんにそう聞かれることもあるという風情あふれる佇まいだ。
玄関を入った正面には、奥さんのたっての希望で手水鉢が据えられ、ホールの向こうを見通すと、薪ストーブが杉張りの天井に煙突を伸ばしている。「癒されて居心地のいい家。旅館のような非日常というのが、大きなイメージでした」と奥さん。
- ペンダントライトはセードの大きさにもこだわった。
- 玄関東側。暖簾の先はシューズクローク。
工務店のサポートで
完成させた自然素材の家
宮木さん家族が、未来工房とともにこの家を完成させたのは1年前のこと。それまでの11年間は別のメーカーで建てた新建材の注文住宅に暮らしていた。以前は質よりも金額重視の家を建てたが、「新築の梅雨時期は籠のインテリアなどがカビてしまったこともあって」、あまり住み心地のよいものではなかったのだという。そこで2度目の家づくりを検討しはじめ、自然素材に精通した未来工房をパートナーに選んだのだ。「もともと気になる工務店でしたが、まだ家を建てるか決めていない7年も前から営業さんが親身に対応してくださって。家の魅力はもちろん、スタッフの皆さんの人柄がいちばんの決め手でした」。
家づくりの過程でも、同社との密なやり取りが続いた。「要望を営業さんや設計士の松本典生さんに伝えると、イラストで提案してくれました。自然素材についても詳しく教えてもらい、性質や値段なりの価値を理解して、イメージに合うものを選べました」。
- 造作の階段の納まりに大工仕事が光る。
- 中庭にはモミジやクリスマスローズを配した。モミジは枝ぶりのいいものを吟味したのだという。
設計を担当した松本さんは「ウナギの寝床のような敷地に合わせて、ハード面からまとめました。法規的な採光の計算から、中庭は必須。隣地の影を避けて光をとれる箇所にはめ殺し窓を配しています」。また旅館のような印象を叶えるために、暖簾を入れられる箇所はあえてドアを設けず、さらに造作建具、左官、襖紙を取り入れるなど細部へもこだわりを散りばめた。「特に左官は、職人さんの技術の賜物です。土間の仕上げ、表の洗い出し。内部の数寄屋窓にしても、塗り込まなければならないので」。
四季を
感じる暮らし
できあがった住まいは「夏は涼しく、冬は薪ストーブと木のぬくもりが格別です。すべての時期が楽しめる家だなと、素直に思えます」とご主人。「梅雨時期も快適でした。中庭のおかげで、家に居ながら季節を感じられます。仕事が忙しいのですが、もっとこの家でゆっくりしたいです」と奥さんも続く。
- 階段を上がったホールに配したワークスペース。
未来工房・参与の馬場勇人さんは「燻煙処理で調湿性を高めた無垢の一本ものの構造材と羊毛100%の断熱材の組み合わせで、室内の湿度を快適(40~60%)に保っているのです。宮木邸は塗り壁も多いので、なおさら心地よいですね」。3シーズン窓を開けて過ごせる九州の風土に最適な家が完成したと説明する。
質のよい素材、設計、職人技が見事に合わさった住まいは、まさに非日常の安らぎを感じさせた。
所在地 | 福岡県 |
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面積 | 敷地 266.64㎡ 延床 117.58㎡(1階 71.21㎡ 2階 46.37㎡) |
竣工 | 2020年2月(工期 2019年8月〜2020年2月) |
設計 | 松本典生(ロイドワークス二級建築士事務所) |
施工 | ㈱未来工房 現場監督:小川拳矢 大工棟梁:西川優蔵(西川建設) |
左官 | 内部/深町 徹(深町左建)外部/黒田技研 |
構造形式 | 木造軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=三州野安 防災瓦 軒天井=再生木材 レッドパイン材現し 外壁=天然スイス漆喰 カルクファザード 木張り ウイルウォールT&Gパネル |
主な内部仕上げ | 天井=屋根板現し 壁=紙+珪藻土クロス 東リWEN9012 ほか左官塗り(茶の間) 左官塗り+腰壁部分タイル貼り(手水鉢) 床=八女杉無垢板厚30mm+リボス・クノスオイル塗布(1階) 八女杉無垢板厚35mm+リボス・クノスオイル塗布(2階) |
株式会社 未来工房
〒830-0047 福岡県久留米市津福本町731
未来工房は、いつもの暮らしを、生きていることそのものを幸せだと思えることこそが
本当の豊かさだと考え、家づくりをしています。
そんな豊かさを感じられるのは、石油化学の工業製品で作られる家ではなく、
足音も手ざわりも心地よい本物の素材でつくる、心くばりに満ちた手しごとの家。
何の変哲もない豊かな日常をつくるために、
私たちはこれからも、本物の自然素材で家を作り続けます。
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