丸太梁現しの大空間が自慢。夏の猛暑対策を施した家
丸太梁現しの大空間が自慢。
夏の猛暑対策を施した家
地域循環型の家づくりを行う、けんちくや前長。
その代表・前澤さんの自邸は、伝統的な木組みの家でありながら
優れた断熱・気密性能を実現している。
これからの時代の木の家の可能性をご紹介しよう。
栃木県さくら市 注文住宅 けんちくや前長 前澤邸
設計・施工=㈱けんちくや前長 文=鈴木和宏
天然乾燥した地元の木材を
大工が手刻みし組み上げる
「近くの山の木を使い 木組みの家で 健康的に、そんな暮らしがしたい。」……けんちくや前長が20年近く使い続けるスローガンだ。時間をかけて天然乾燥させた地元の木材を、プレカットではなく大工が一本一本墨付け・手刻みし、伝統的な木組みで一棟一棟つくり上げていく。合板は一切使わず、杉と檜材は100%栃木県産を用いる。さらに、栃木県産の大谷石や深岩石、漆喰などを使うことで、輸送コストやCO2削減に努める。
この家は、そんな地域循環型の家づくりを実践する同社の代表・前澤さんの自邸である。「父が創業して私が二代目ですが、もともと材木業を営んでいたこともあり、木にはこだわりがあります。機械化の導入で、大工が職人ではなく作業員のようになりつつある現状をなんとかしたい、木を扱う技術をしっかり継承したい、そんな思いもありました」と前澤さん。
前澤邸の平面プランはL字型で、南に突き出すようにリビングを配置した。リビングは吹き抜けの大空間で、見上げれば井桁に組んだ地松の丸太梁に圧倒される。丸太梁には間接照明を組み込み、リビングの壁側には大きな本棚と3人の子どもたちが並んで座れるカウンターを造り付け、ライブラリーコーナーとしている。伝統的な木組みの家でありながら、新しいインテリアやライフスタイルの提案を盛り込んでいるのも、同社ならではのこだわりだ。
世界レベルの断熱・気密性能で
これからの時代の木の家を提案
前澤邸では新たなチャレンジも行なっている。環境に優しい木質系断熱材ウッドファイバーを用い、世界レベルの高度な断熱・気密性能を実現しているのだ。「目指したのは、夏の猛暑にしっかりと対応できる性能でした。これからの地球規模での気候変動を考えると、夏に家族をどう守り、エネルギー消費をどう抑えるかが大きな課題です」(前澤さん)。
建物南側の外壁を日射熱と水分を吸収するのに十分な地元産35㎜厚の檜で仕上げるなど、自然素材ならではの調湿性・蓄熱性を最大限に活かし、窓開けによる重力換気や日射を上手に調整するパッシブデザインの採用で、心地よさを追求しているという。
「初めての夏も猛暑でしたが、計画段階でイメージしたことが実際に暮らしの中で体感できるものとなりました。また、夏の猛暑対策は同時に冬の快適さをもたらしてくれます。前日の日射があれば、朝の外気温が2度まで下がったときでも、室内は無暖房で19度、湿度50%をキープしています」(前澤さん)。伝統的な木組みと優れた断熱・気密性能を備えた前澤邸は、これからの時代の木の家の可能性や方向性を示す建築となっている。
同社の家づくりに興味を持たれた方におすすめなのが、築20年を経た常設展示場だ。実際に足を運び、経年美化した木組みや、木の家の心地よさを体験してみてはいかがだろう。
所在地 | 栃木県さくら市 |
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家族構成 | 夫婦+子供3人 |
面積 | 敷地 460.46㎡ 延床 188.80㎡(1階 119.24㎡ 2階 69.56㎡) |
竣工 | 2021年12月(工期2020年12月~2021年12月) |
設計 | ㈱けんちくや前長(豊島) |
施工 | ㈱けんちくや前長(施工部) |
構造形式 | 木造伝統工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板 段平葺き 外壁=そとん壁/一部ヒノキ板(厚35㎜)下見張り無塗装 軒天井=杉板(厚12㎜)化粧本実クリア塗装 |
主な内部仕上げ | 天井=杉無垢板(厚12㎜)無塗装 壁=プラスターボード下地漆喰仕上げ/一部土壁、大谷石張り 床=北海道産ナラ、タモ、クルミ無垢板 オスモカラー仕上げ |
〒321-0634 栃木県那須烏山市野上389-9
私たちがつくる木の家は、地域材を天然乾燥し、
大工が墨付けして刻む伝統工法の「木組み」でありながら、
断熱・気密の性能を高めた住まいです。
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