重厚な古材と熟練の技が光る古民家
重厚な古材と
熟練の技が光る古民家
茨城県産の木材と自然素材を生かし、
親方と棟梁の確かな経験による大工技術で
住まい手のこだわりの家づくりを実現する。
茨城県那珂市 古民家再生 福田建設 我妻邸
設計=蔀 裕二 施工=㈲福田建設 写真=畑 拓
理想を遥かに
超える住まい
定利会長の人柄に惹かれて家づくりを決意するお客さんが多い福田建設。施主の我妻さんもその一人だ。「親方に出会って『この方なら本当に理想の家を建ててくれるんじゃないか』と直感しました。初対面でこの方しかいないと夫婦の意見も一致しました」と語る。
切妻の大屋根に和瓦と深い軒、地場産の無垢材、大工の手刻み、自然素材、オリジナルの建具、設計への参加……こんなにたくさんの理想を叶えられる工務店などあるのだろうか、と半ば諦めていた我妻さん。『チルチンびと』を読んで気になっていた地元の福田建設に連絡すると、定利会長が勢いよく電話に出てくれた。それからはとんとん拍子に話が進み、築85年の畑付き古民家を購入、家づくりがスタートした。
「我妻さんと話しているうちに頭の中にイメージが湧いてきた」(定利会長)。建築家の蔀さん、棟梁の福田智史さん、我妻さんとともに、綿密な打ち合わせを何度も重ねていった。「最初から切妻屋根と決まっていたので、建物の間口や奥行き、桁の高さ、屋根の勾配など、何度も3Dで全体のバランスを検討しました」(蔀さん)。外観のほかにも我妻さんが考案した建具や造り付け家具のデザインを図面に描き起こし、構造的な合理性を確かめていった。
我妻さんが伐採に同行し、1年越しで揃った大黒柱と庇丸太は「皮剥きも自分たちで行い、いい思い出になった」と目を細める。直径50センチ、長さ30メートルほどあったという大径木からは、7メートルの大黒柱と5メートルの梁、さらに3メートルの柱を3本取って仕上げた。ほかにも多くの要望と定利会長の提案が融合した住まいは、頻繁に現場へ通っていた我妻さんも「本当に自分たちが住んでいいのだろうか」と思うほどの仕上がりだったという。
定利親方が伝えたいこと
昔と比べて家のつくりが変わってしまったと感じている定利会長。「手刻みの家が減り、若い方や予算を優先する方はほとんどプレカットになってしまった。我妻さんのような家を頼んでくれる人が増えたら、複雑で難しいけど、やりがいがあって楽しいんだけどな」。
実は65歳で引退するつもりだった定利会長。引退から1カ月後にガンが見つかった。引退後、後継者で息子の福田成利社長(40歳)に少しずつ会社のことを教えていこうと思っていた矢先の出来事だった。定利会長は4カ月間の入院中も図面を病室に持ち込んで、木拾いや設計者との打ち合わせを重ねていたという。成利社長は、「やっぱり心配で、父にもし何かあったときには右も左もわからないので不安でした」と当時を振り返る。
今では成利社長に数件の現場を一人で任せ、娘婿である棟梁の福田智史さん(39歳)にも技術を伝え教えている定利会長。「難しい仕事はなるべく智史に預けている。自分の技術をすべて伝えたい」と微笑み、期待の眼差しを向ける。福田建設では、今年を「挑戦の年」と位置づけ、リフォームや子育て世代の家づくりにも取り組んでいきたいと話す。定利会長は「新しい展示場をつくって若い方の仕事を取りたい。そうじゃないと安心して辞められないからね」と笑顔を見せた。
所在地 | 茨城県那珂市額田 |
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家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
面積 | 敷地 828.00㎡ 延床 154.08㎡(1階 113.61㎡ 2階 40.47㎡) |
設計 | 建築設計室シドミ(設計担当:蔀裕二) |
施工 | ㈲福田建設(現場監督:福田智史) |
構造形式 | 木造2階建て |
主な外部仕上げ | 屋根=和瓦葺き 軒天井=杉板厚12mm張り 外壁=ジョリパット塗り |
主な内部仕上げ | 天井=杉板厚12mm張り 壁=ダイナアトーマス塗り 床=檜板厚30mm張り |
有限会社 福田建設
〒309-1623 茨城県笠間市上加賀田1515
福田建設は大工の見習いから始めた親方が「大工たるモノこういうモノ」という
いわば「大工の美学」で育てた大工と、同じ「美学」を共有する大工で構成しています。
木造在来伝統工法を用いた大工集団の工務店です。
伝統的な和風建築から、モダンな現代和風を得意としています。
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