この家でしか味わえない音と風
この家でしか
味わえない音と風
音楽鑑賞が大好きなご主人と、
華道家の奥さんが望んだのは、趣味を愉しめる
おだやかな住まい。その望みを、設計力と
大工の技術を擁する工務店が叶えた。
東京都練馬区 注文住宅 井上建築工業 いのうえさんの家 小林邸
設計・施工=㈲井上建築工業 いのうえさんの家 写真=清水 謙
都心から電車に揺られて30分ほどの住宅街にある小林邸。通りから庭越しに見えるのは、大きな窓が気持ちよさそうな平屋建て。土が塗られた外壁と庭の木々があいまって、落ち着きのある趣だ。玄関を開けると出迎えてくれるのは、明るく広々としたリビング・ダイニング。開口から庭の緑がパノラマで目に飛び込んでくる。天井はのびのびと高く、柱や屋根の木組を現しとした真壁造りの家だ。
長年都心のマンションで暮らしていた小林さん夫妻。空き家となっていたご主人の実家に風を通すため週末に通っていたが、この際建て直して住もうということになった。また、マンションでは周囲を気にして楽しみ切れなかった、趣味の音楽鑑賞を満喫したいというのも動機の一つ。
当初は、安価なハウスメーカーの家でいいと考えていたというご主人。建て替えの話を知人にしたところ『チルチンびと』を紹介され、メーカー以外の木の家が、必ずしも高いわけではないと説かれた。
ご主人が向かった先は、自宅からも近い㈲井上建築工業/いのうえさんの家。同社は先代から続く、地域に根ざした大工型工務店。大工力を継承しながらも、時代に合わせた家づくりのため、建築家の勉強会などにも積極的に参加し、デザイン力を培っている。「自然素材を使うだけでなく、デザインも大切にしています」と話す同社社長の井上泰一さん。とかく重厚になりがちな真壁造りだが、すっきりと見せる空間が得意だ。
その力はご主人の心にも響き、建築中の家を何軒か見て、目から鱗が落ちたという。「工夫された設計で、実際の面積よりも広く感じる空間に驚きました」。これが決め手となり同社での家づくりが始まった。
吹き抜ける風と音がつくり出す
心地いい空間
ご主人の要望は、将来を考え、階段のない平屋建てで、リビング・ダイニングで音楽や映画を楽しみたいというもの。これを元に、設計と現場監督を担った同社の若手・川原宏一さんは一つの部屋ですべてを楽しめるようプランを練った。
工事中、現場での打ち合わせも重ね、「図面上じゃわからないことを現場でていねいに説明してくれて、安心できました」とご主人。仏壇置き場や収納など、細かいところまで川原さんと詰めていった。
庭づくりは華道家の奥さんの知人に依頼。四季折々で愉しめる椿やモクレン、モミジなどの花木中心の庭となった。「家が素敵だから造園の親方がすごく頑張ってくれて」と奥さん。
こうして完成を迎えた小林邸。「こんなに開放的で心地いい空間で音楽を聴けて幸せ。出かけたくないくらいです」とうれしそうにレコードに針を落とすご主人。奥さんは「風通しが抜群でお互いの気配も感じられる」と話す。
小林家では井上さんを始め、家づくりに関わった人たちを家に招き交流を深めた。「CDの音は所詮レコードには敵わないって言うけど、家づくりも一緒だね。人の手仕事でしか出せない心地よさがある」。そんな話をしながら酒を酌み交わしたという。この家にしかない贅沢を愉しむ生活はまだ始まったばかりだ。
所在地 | 東京都練馬区 |
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家族構成 | 夫婦 |
面積 | 敷地 218.87㎡ 94.56㎡ |
竣工 | 2012年2月(工期2011年8月~2012年2月) |
設計・施工 | ㈲井上建築工業/いのうえさんの家(設計・現場監督=川原宏一) |
構造形式 | 木造在来軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板 軒天井=杉板 外壁=リシン掻き落とし |
主な内部仕上げ | 天井=杉野地板現し 壁=漆喰 床=杉板 |
有限会社 井上建築工業/いのうえさんの家
〒359-1113 埼玉県所沢市喜多町16-6
国産無垢材と真壁づくりの、呼吸する家。
それがInoue Styleです。
自然素材を使用した心地よい家づくりを心掛けています。
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