子どもが自由に動き回る、おおらかで楽しい木の家
子どもが自由に動き回る
おおらかで楽しい木の家
化学物質過敏症の我が子を健やかに過ごさせたい。
そんな夫妻の願いをかなえたのは地域に根を下ろし、自然素材を使いこなす工務店だ。
同社の手がけた「チルチンびと仕様の家」にはいつも元気な足音が響く。
滋賀県 注文住宅 安土建築工房 H邸
設計・施工=㈱安土建築工房 文=角丸泰子 写真=米谷 享
環境への思いに共感、
さらに信頼が増した
なかに入ると、すがすがしい木の香りに包まれるHさん一家の新居。「どこにいても過ごしやすいです」奥さんがほほ笑む。こちらは安土建築工房による「チルチンびと仕様の家」。3人のお子さんのうち上の二人が化学物質過敏症のため、さまざまな面で配慮が欠かせない。家をつくる際も電磁波や排気ガスの少ない土地を探したが、住まいそのものが安心して暮らせるものであることが第一。以前から愛読している『チルチンびと』誌上で同仕様の家と出会ったことが決め手になった。
「化学物質の室内濃度を測定すると聞いて信用できると。また、安土さんの家は2階の床板が1階の天井なので、目に見えない場所がほとんどないのも理にかなっている。すべて腑に落ちるという感じでした」
西澤由男社長がかつて家族とドイツで生活したこと、その経験が教育や環境への思いに結びついていることを知り、信頼が増したとも。なお、同社ではゴミを出さない家づくりをめざす「ゼロエミッションプロジェクト」の活動にも取り組んでいる。
打ち合わせでは、奥さんの意見を設計担当の竹内賢治さんがていねいに聞き、図面に反映させた。間取りで重視したのは、子どもたちが自由に動き回れること。1階は大きなリビング・ダイニングを中心に和室もつながっている。一方、2階は吹き抜けでロフトも一体に。家族が互いの気配を自然に感じながら暮らせる。
化学物質を屋内に入れない工夫も随所に。玄関を二つに分け家族用の内玄関に洗面コーナーを設けたほか、2階の南側にインナーテラスもある。日が入るので、洗濯物を干すばかりかサンルームとしても楽しんでいる。
居心地がいいから
予定より早く入居
実は、このお宅は同社の手がけた「チルチンびと仕様の家」第1号だ。留意した点を西澤社長に聞いた。「自然素材を使うのは従来と同じ。ただ、今回は安全性の確認が重要でした。建材すべての実物サンプルをHさんのお子さんのかかりつけのお医者さんに見せ、アレルギー症状が出ないか確認してもらったのは初めてです」
竹内さんも隣でうなずく。「設計スタッフも現場の職人も仕様に徹底してこだわり、全員のスキルアップになったと自負しています」
構造材は滋賀県産の杉と檜。県産材を使うと補助金が出る同県の制度を利用した。1階の床の仕上げはクリ材。壁は漆喰塗り。それらに加え、下地材、断熱材などの建材、接着剤に至るまでトレースのできる安全データシートのあるものを用いている。
昨年6月に家が完成。半年は入居せず風を通そうと目論んでいたが、入ってみたら予想よりずっと居心地がよかった。そこで、夫妻は予定を繰り上げ、8月に移ってきたという。
「数値はクリアしたといっても、実際に住まないと不安で……。でも、まったく大丈夫でした。子どもたちも毎日、元気いっぱい遊んでいます」
午後、末っ子の坊やが保育園から帰ってきた。手を洗うや否や階段を自分の背丈より高い段からぴょんと飛び降り、室内を駆け回る。3歳児とは思えない身の軽さにびっくり。「床を撫でたり柱に抱きついたりしながら、成長してもらいたいです。幼い頃に触れた素材の質感や匂いはどのお子さんにとっても記憶として残りますから。住まい手が自分のルーツはここにあると感じられる家をつくることが私たちの務め。いつもそう考えています」(西澤社長)
所在地 | 滋賀県 |
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家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
面積 | 敷地 155.24㎡ 延床 137.12㎡(1階 77.50㎡ 2階 59.62㎡) |
竣工 | 2011年6月(工期 2010年10月~2011年6月) |
設計・施工 | ㈱安土建築工房 |
構造形式 | 木造軸組 |
主な外部仕上げ | 屋根=陶器瓦葺き 軒天井=杉板 外壁=配合モルタル塗り |
主な内部仕上げ | 天井=杉板現し 壁=漆喰 床=1階 クリ 2階 杉板 |
株式会社 安土建築工房
〒521-1311 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦3300
安土建築工房は、滋賀で木の家の設計・施工・リフォームを手掛け、
「日本の伝統技術の継承」と「風土に根ざした建築」をコンセプトに
21世紀の本当にあるべき暮らしの姿、お客様が満足し長く愛着を持って住める家づくりを追求しています。
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