吉野の杉が心地よく香る 落ち着いた佇まいの家

奈良県五條市 注文住宅 倭人の家建築
奈良県

吉野の杉が心地よく香る
落ち着いた佇まいの家

昔から林業が盛んな奈良県吉野地方。
代々山を守り、木材を供給してきた職人たちが
それらを家づくりへとつなげる。
吉野の木材で建てた、夫婦二人の住まいを訪ねた。

奈良県五條市 注文住宅 倭人の家建築 新子邸
設計・施工=㈲倭人の家建築 写真=検見崎まこと

玄関を入ると、気持ちのよい木の香りに包まれた。ここは奈良県五條市にある新子康次さん、磨須美さん夫妻の住まい。日本三大美林の一つとして名高い吉野の材をたっぷり使って建てられている。天井や床に吉野杉、柱には吉野檜を使っているが、いずれも目の詰んだ良材で、やわらかい表情が室内に落ち着きを与えている。実は住まい手の新子さんは倭人の家建築に携わる一人だ。同社の顧客がこの住まいを見学することもあるという。

奈良県吉野郡は古くから植林の歴史を持ち、杉の赤身など、高級材の産地として名高い。しかし、吉野の材とは言え、木は高級材として流通する部分だけではない。「節の多い上の部分から、下まで全部使えますからね」と永井製材所の永井康雄さんは話す。大切に育てた木は、すべて生かしたい。そんな思いが木をふんだんに使う家づくりへとつながる。

平成14年、代々吉野の木材に携わってきた山主の栗山武久さん、玉木材の新子さん、永井さんが中心となり、吉野郡に隣接する五條市で倭人の家建築を立ち上げた。以来、地元の大工と協力して、地域材による家づくりを行ってきた。

同社では、栗山さんが所有する吉野郡東吉野村などの山の木を新子さんが伐り出し、永井さんが製材して、大工の加工場へと供給する。檜の間伐材をフローリングに使うなど、山の恵みをそのまま家づくりに生かす。無垢の木へのこだわりはもちろん、塗料や左官材は自然素材のものを使い、体にやさしい家づくりに取り組んでいる。

また永井さんは以前から、吉野の木材を生かそうという「協同組合倭人」に参加していた。その縁で培った建築家や家具職人などとのネットワークを生かし、倭人の家建築では住まい手の要望に応えて多様な家づくりを行っている。

光と風を取り込む
快適な住まい

新子邸は事務所の建て直しを機に建てた、夫婦二人の終の住処。新子さん夫婦の希望を、棟梁・戌亥利男さんが昔ながらの板図に起こし、1本1本、自ら墨付けを行って建てた、木組みが美しい住まいだ。

リビングはたっぷり光が注ぎ、心地よいぬくもりがある。また、家の各部屋の床には、通気口を設置。冬は床と同じ材で蓋をしてぬくもりを閉じ込める。春には格子状の蓋に替え、自然換気で清々しい空気を入れる。壁には調湿効果の高い珪藻土が塗られている。「訪れる人は皆、気持ちがいいって言ってくれますね」と、磨須美さんは笑顔で話した。

奈良県五條市 注文住宅 倭人の家建築 平面図

所在地 奈良県五條市
家族構成 夫婦
面積 延床 106㎡
竣工 2005年5月(工期 2004年11月~2005年5月)
設計・施工 ㈲倭人の家建築(棟梁:戌亥利男)
構造形式 木造在来軸組
主な外部仕上げ 屋根=日本瓦
外壁=モルタル
軒天井=杉板
主な内部仕上げ 天井=杉
壁=珪藻土
床=杉・檜板張り

チルチンびと 48号掲載|電子書籍でご覧いただけます

有限会社 倭人の家建築
〒637-0014 奈良県五條市住川町888-22

古くからの伝統ある建築様式を受け継ぎ、
新しい暮らしにマッチするデザインと機能性を考え、かつ地域の材を使い世界に一つしかない
建築した者の顔がはっきりと見え長く暮らしていける家づくりに努めています。

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