第四十回 竹と籐で世界と結ばれる

 

 

わたしが仕事でつくる籠は、おもに竹の籠です。竹の籠だから材料は竹のみかというと、必ずしもそうではなくて、部分的には「籐(とう)」という素材を用います。竹(タケとササ)はすべて日本国内で伐られたものを使っていますが、籐に関してはその反対、すべて輸入品です。国内に籐は自生せず、アジアやアフリカ等を中心に数百種、日本へは主に東南アジアから輸入されているようです。

籐は竹よりもずっとしなやかな素材で、良質の籐を上手に加工すれば、爪楊枝ほどの細い竹ヒゴにクルクルと巻きつけても、折れることなくピタリと添わせることが可能です。条件によっては軟質のササ類でも同様のことが出来る場合がありますが、しなやかさという一点に関してならばやはり籐が勝っているようです。また、すべてを籐で編み上げた籠の柔らかな味わいにも独特の魅力があります。その代わり、竹のようにピンと立ち上がる直線の美しさや、曲がっても跳ね返すような強いコシは備えていません。素材の個性はみな一長一短で、それを生かすのが作り手の役目。

 
(左)奥が籐、手前が竹ヒゴ(中央)籠の縁を巻いたり(右)籠の手を巻くのにも

 
輸入品である籐は昔から高価な素材で、現在も良質なものは高価です。それゆえ日用の民具などに使われることは少なく、煎茶や抹茶などのお茶道具や工芸品、高級な家具の素材として主に用いられてきました。一方、素材としてではなく製品の形で輸入されている、現在の籐の雑貨はしばしば非常に安価で販売されていることもあり、現代の流通の不思議を感じます。

 
タケ、ササ、籐を一つの籠に

こちらは私の籠。大陸から日本へ古い時代に帰化して広まったとも考えられる大型のタケと、日本の地域ごとに土着する小さなササ類、海を渡って運ばれてくる籐を組み合わせ、手提げの形にまとめました。太平洋の交差点のような島で世界の産物が交易されてきた歴史を感じながら籠を作ると、狭い仕事場も果てしなく広がるような気がするのは妄想が過ぎるでしょうか。

寒い冬もそろそろ終わりへ。小さな手提げを携えて散歩する日本の春が待ち遠しいものです。
 

 

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