マダケの七変化

三大有用竹と呼ばれる、竹の中でもメジャーな三つの品種(モウソウチク、ハチク、マダケ)がありますが、中でも工芸・細工材料として最も用途の広い品種がマダケです。扱いやすさ美しさを兼ね備えたマダケですが、竹といってまず思い浮かぶ「青竹」以外にも、状態によってそれぞれ呼び名があります。そのマダケの姿について今回はざっとご紹介しましょう。

まず「白竹」。これは、青竹に油抜きという熱処理を施して日に晒したもので、青竹よりも材としての耐久力が高まります。昔の籠は青竹で出来ていましたが、いまは主にこの白竹を素材として籠を作ります。次に「胡麻竹」。老年となり竹林で立ち枯れした竹には胡麻のような模様が生じます。硬くてコシがないので籠を編むには適しませんが、茶杓や花入に。

(右)白竹。晒し竹(さらしだけ)とも(左)胡麻竹。ザラザラしています

竹林を地面の下で支え広げる地下茎が、稀に地上に現れて竹になったものが「実竹(じっちく)」です。非常に肉厚で、樋(ヒ)と呼ばれる溝がふつうの竹より深く入っており、茶杓には最上です。「しみ竹」というのもあります。これは竹林全体が老齢期に入った時に出現すると言われ、非常に珍しい竹です。あらわれる景色は一本ずつに個性的で、私の好きな素材の一つです。胡麻竹同様に籠を編むには適さず、茶杓や花入などになります。

(左)実竹。樋竹とも(右)しみ竹の模様は千差万別

そして、最後は煤竹です。ご存知の方も多いと思いますが、かつて茅葺き屋根を支えた材料で、青竹が二百年前後も囲炉裏の煙で燻され炭化したものです。煙や縄の具合によって生じる独特の景色は最高の美しさで、まさにマダケの王者。

時間が生み出した美竹、煤竹

このように同じマダケでも様々な姿があります。さて七変化と題しましたが、ここまでで六種類、自然と時間が生んだ姿です。最後の一つは、人の手が加わって道具となり生活にとけ込む竹の姿。その姿についてはここに書ききれません。これまでの、そして今後の連載でじっくりとご紹介してまいります。

 

 

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