第二十八回 「龍勢」竹のロケットは何を運んだか

2014年10月18日、戦国時代の狼煙に由来すると謳われる竹のロケット「朝比奈大龍勢」を見に、静岡県は藤枝市岡部町を流れる朝比奈川のほとりへと出掛けました。

15mの竹ロケット「龍勢」の発射

現在、朝比奈のほかにも秩父吉田の龍勢祭りなど、幾つかの龍勢が伝わっていますが、記録として残っているのはいずれも明治以降で、技術の発祥がいつであるのか正確には分っていません。朝比奈の場合には、今川氏の家臣で、現在も地名として名が残っている岡部氏と朝比奈氏が通信に用いた狼煙が起源ということになっています。史実はさておき、今回は私が見た「朝比奈大龍勢」について「竹」という視点でご紹介します。

龍勢は「ガ」と呼ばれる先端部(仕掛けの「曲物」が入っている、長さ約60cmの紙製円筒容器、二つ目の画像の櫓頂上の国旗右側のオレンジ色部分)と、その下につづく長い竹の「尾」、ガの真下で尾との接続部に並んで付く長さ約45cmの竹製燃焼筒「吹き筒」からなっており、高さ約20mの常設櫓の向って右側に垂直に設置されます。全長15mの龍勢の大半は姿勢制御のための尾で、マダケを用いて作られ、生えている方向とは逆に根元を上にします。制作開始から打ち上げ日までには二ヶ月弱を要するとのこと。

「連」と称せられる地元のグループそれぞれが制作された龍勢は、昼に17本、夜に13本の合計30本が約20分間隔で設置と発射が繰り返されます。「東西、東西、大龍勢〜」から始まる口上が、各龍勢の発射ごとに歌われ、歌に込められた願いを空へ打ち上げるのが龍勢、というのが現在の祭の趣旨であるようです。発祥はともあれ、今は民間による手作り竹ロケットの平和利用ということになりますね。日本以外のアジアにもある民間のロケット祭についても気になりますが、それはまたの機会に。

それにしても、約3kgの火薬の燃焼による推進力で、成功の際には高度300m前後まで飛翔するロケットの迫力には驚くばかり。その一端を画像で感じて頂けるでしょうか。

「龍勢」竹のロケット

今回、龍勢を見る前に予備知識を付けないことにした甲斐もあって、たいへん新鮮で感動する体験となりました。その後、この島での竹ロケット周辺の歴史を色々と仕入れましたが、全てを記すことが出来ませんので、自分のブログで継続的に考えてみたいと思います。ご興味のあるかたはブログにも訪れて頂ければ幸いです。

 

 

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