四つ目にはじまり(後編)

前編は四つ目に「編む」作業でした。「籠を編む」と一概に言いますが、原則、編みっぱなしにはしません。ほどけないよう終端を始末する必要があります。編んだ素地(きじ)と同じ竹ヒゴを使って縁を巻いていく場合と、別な竹で強固な縁を作り素地を挟んで仕上げる方法に大別されますが、今回は後者の方法で四角い縁を付けます。

竹の素地の編み終わりを外側と内側から挟む “ 縁 ” の部分は、十分な強度を持つように素地を編んだ竹ヒゴよりもずっと分厚く作ります。この縁の成形には、手の力だけでなく、火の熱を加えます。火加減は、材料に応じて蝋燭やバーナーを使い分け、熱で少し柔らかく感じた時を狙って焦げないように気をつけつつ曲げ、水で冷やして固めます。また、縁の内側と外側では長さが違いますので、きちんと収まるように経験と計算により寸法を割り出してから作業せねばなりません。さらに、縁自体も素地と物理的に固定する必要がありますので、ここでは竹よりもしなやかな籐を使い、バラけないようにしっかりと巻きます。これらの材料も、自分で必要な寸法に加工するのは申すまでもないことです。先人の知恵の集積を参照しながら、さらに工夫を加えていきます。

(左)縁作りが粗末だと見た目も耐久性も損なわれますので丁寧に (右)縁が付くと籠らしい形に

さて、ようやく完成! ・・・と言いたいところですが、実はまだ完成ではありません。この籠にはさらなる補強を施す予定です。補強すること自体で素地を守り、また交換可能な補強部分が先に壊れることで素地の損傷を防ぐという二重の防御になります。籠の制作にはキリがなく、やろうと思えば幾らでもやることは増えていきます。どこまでが求められているか都度考えつつ終点を見つけるのですが、一つの籠を作り終えても、次の籠ではもっと工夫しようと、籠づくりの道は続きます。

「四つ目にはじまり」ました籠づくり、「四つ目に終わる」と言える日はずっと先、いやいや終わる日は来ないですが、それでも歩いていきます。一歩一歩、時に立ち止まりつつ前へ。

 

 

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