第二十五回 竹から目線(煤竹版)

「竹から目線」という言葉をご存知ですか?おそらく、まだご存知ないでしょう。上から目線という言葉がありますが、私の周りでは「竹から目線」がちょっとした流行になっています。
竹から目線(煤竹版)
ここ数年、雑貨の分野では「かご」が注目のキーワードとなり、アジアからヨーロッパ、あるいはロシアなど、世界中の多様な素材から作られた「かご」が日本にやってきて、人気を博しています。それも喜ばしいことですが、竹工家の私としては「かご」だけでなく「竹」にも注目して頂きたいと考えて、しつこいくらいにタケ・たけ・竹とあらゆるところで口にしてきました。このコラムもその一つです。

その甲斐あってか、身近な存在ゆえに注目されにくい竹について、改めて興味を持って下さる方が、少なくとも自分の周りでは確実に増えてきているのを感じます。その証拠に、以前であれば、あそこでこんな展示をやっているとか、こんな面白い竹籠があるとかいう話題を、私が周りの人に(無理矢理に)伝えていたのですが、最近ではだんだんと逆転して、むしろ私が教えて頂くことのほうが多くなっているほど。初田さんこの展示はオススメです、こんな本が出ています、これは一体ナニに使うんでしょうねぇ面白いですねと、「ちょっと皆さんどうしたのですか」というくらい、竹について目ざとく敏感になっている。つまり、この動きを称して「竹から目線」というわけです。一旦、竹に興味を持たれて気をつけるようになると、関わりのある情報が自然に入ってくるようになり、さらに興味を深める機会が増えます。

新しく言葉を覚えると、その後は同じ言葉を目にし耳にする機会が増える、という現象があります。脳の中にキーワードとして記録されることで、未知のままスルーされていた状態から以後は検知可能な言葉にかわり、何度も触れることで理解が深まる、というサイクル。それと同じです。

こうして「竹から目線」を身につけると「かご」はもちろん、古今の道具や場所づくりに竹が多く使われていることに気づき、竹の特性が徐々に分るようになります。こうして竹という軸がひとつ出来ると、ちがう分野のものを見る際にも、その経験が生きると私は考えています。

ですから「竹から目線」とは一つのスタート。身近な物差しで暮らしを見つめ直す「〇〇目線」の見つめ方が広がっていくと、おのずと興味が広がって、毎日がもっと楽しくなるのではないでしょうか。

 

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