第十七回 竹との付きあい方

雨の多い秋でした。年々、春と秋が短くなり、夏と冬の二季が力を増しているように感じられ、竹で作られたものの扱い方も、すこしずつ変わっていくのかな、などと考えたりしています。さて、今回は皆様の身の回りにある竹かごの日常の手入れについて。

竹には割れやすい性質があり、筒として使う場合にそれは弱点ですが、籠に加工するには利点となります。また断面や肉質部を中心に、カビや虫害に弱い難点がありますが、それも害を受けにくい表皮を使うことである程度は防ぐことが出来ます。そうした竹かごへの加工は手間が掛かりますが、道具としての実用性からも、竹自身の命を永らえさせるためにも有効な活用であるなと、その知恵と人の力に感心するばかり。

それでも籠に弱点がないわけではありません。台所用の籠は濡らすことでカビが生えやすい状態になりますし、虫に齧られる場合もあります。使ったら丁寧に手洗いして自然によく乾かす、これが手入れの基本です。直射日光も長年の間には竹の繊維を傷めますので、乾かしたら日の当たるところに長時間置かない方がよいでしょう。また、植物繊維である以上は水に触れれば徐々にダメージが蓄積します。美術工芸としての籠は極力濡らさぬことが大切で、花籠の花に水を打つときには籠を紙や布で防ぐ、そのひと手間で籠の寿命が延びます。

一方で、水に濡らさない籠で気になるのはホコリです。編み目の変化や繊細さは竹籠の美点ですが、凹凸は埃のたまり場にもなります。

 

(左)細かな編み目は見どころですが、埃もつきやすい (右)各種のブラシを籠用に

埃を取り除くには、毛のブラシが便利です。硬軟いくつかのブラシを用意し、編み目に沿って軽く籠を撫でると埃は落ちます。時間を掛けて繰り返しブラシを掛ければ、しだいに輝きを取り戻すでしょう。完全にピカピカにする必要はなく、自然に残った細かな埃は味わいとして籠に深みを与えますし、その時に手やブラシの毛に含まれる油が摺り込まれるのも良い効果があるように思います。また籠の内側を掃除するには先端にブラシの付いた掃除機で吸えば、かなり綺麗になります。こうして埃をまめに取り除くことで、環境が清潔になり、カビなども未然に防ぐことができますので、手入れの時間を楽しみながら習慣にすることで、徐々に籠が育っていく過程をお楽しみ頂けるのではないでしょうか。

とはいえ、何事もやり過ぎは禁物。花に水をやるように、距離を保ちつつも愛情を絶やさない付きあい方を。おや、なんだか人付き合いにも似ていますね。

 

 

このページの先頭へ戻る