第三十六回 伝えて、習う

 
この夏、二年半ぶりにワークショップを行いました。前回のコラムで自分自身に行った「竹で描く」ことの応用編です。ワークショップに際して、専門的な技法を一方的に伝える時間になるのは避けたいもの。描くことについてならば、自分自身も新鮮な気持ちで学ぶことが出来そうだと考え、久しぶりに試みました。

竹細工、竹工芸、となるとややハードルの高いものですが、絵を描くことは、小学校の図画工作の時間にどなたも経験していることですので、まったく出来ないことはないはずで、描くことを通じて竹の良さに触れて頂こうと。道具と素材の扱いと、基本的な描き方をお伝えしてから、カラフルな封筒や葉書のうえに、竹を用いて自由に描いて頂きました。

 
(左)開始前のサッパリした机上 (中央)開始するや集中、没入 (右)机上の散乱は順調なしるし
 

私が描くときには、竹の編み目のように規則的でシンプルなパターン、色彩のコントラストは淡く、といった自分の好みについ偏りがち。一方で参加者の皆さんの方法には、具象的に描く方や、絵具を盛り上げてコントラストを強調される方もいらしたり。ここで、参加者の作品から何点かご紹介させて頂きます。

 

(左)反復する規則的な模様 (中央)竹の一部から竹林を再構成 (右)東京タワーと月

 

作品とともに記念撮影

 
すべて異なる方の作品です。元の素材は私が用意したものでも、描く方によって十人十色の個性が表現されました。制作後には作品を見せあって、お互いに習います。私がふだん取り組んでいる竹工芸では、一人で竹と向き合う孤独な時間がつづくもの。それに対して今回は、手も頭も、そして口も動かしながら(雑談しながら)のにぎやかな制作。「伝えて、習う」ワークショップは、夏休みの自由工作のような、なつかしくて新鮮な時間になりました。
 

 

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