第三十五回 竹で描き、とどける

梅雨を迎えてひと月、雨の日々に心は重くなりがちです。その気晴らしにと、一年前には笹舟をつくって遊びました(第二十四回)。今年もなにか遊びをと、絵筆の代わりに竹で描くことを試してみようとおもいます。しばらく前から画材になりそうなものを集め、下準備をしておいたところ。いざまず描かん。

 
(左)輪切りの竹で (右)笹の葉を用いて

輪切りの竹をハンコのように用いてペタペタと。竹を輪切りにする仕事としては、竹の花入があり、そうした作品の場合には、竹の選定や用いる位置の決定、切り口の仕上げ、その後のことまでたいへん気を遣う仕事で、それゆえに高価なもの。その点、おなじ輪切りでもスタンプは気楽です。リズムがあって実に楽しい。ずっと捺していたくなります。つぎは、大きな笹葉を版画のように。青々した笹葉も刈り取って一晩経てばシワシワになってしまいますが、紙の上に転写すれば残すことができます。まるで魚拓のよう。

 

ハイ、夏の絵葉書ができました

竹籠をつくるには、竹を割ったり編んだり仕上げたりの工程、それ以前に用途を考え、用途に即した形状を決め、制作の計画を立てるなど、一点のために膨大な時間が掛かり、当たり前ですが複製もできません。そうして、つくったものが何年何十年あるいは百年以上も残る可能性を考えると、なんだか恐ろしくなることもしばしば。どうしても竹については難しく考えることになりがち。時には仕事としての竹との付きあいをはなれ、自由な遊びで頭を軽くする時間も大切です。

それにしても、やってみて分りましたが私の頭はすでに相当カタく、遊んでもほぐす程度が関の山。この遊びは準備さえしておけば技術のいらないことなので、むしろ竹と関わりのない方やお子さんに試してもらえば、ずっと面白いものが出来る気がしてきました。

雨の季節が終わったら、一緒に絵葉書をつくりませんか?

 

 

 

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