第三十三回 春は竹もの

外はすでに初夏の陽気で、春を語るには遅きに失した感がありますが、筍や育ちつつある竹を見つけに出掛けて参りました。
今回は写真を多めに散策気分で。

 
(左)斜面の筍 (中央)平地の筍 (右)生長をつづける筍

まずは斜面に生えるモウソウチクの筍。地面から斜めに顔を出してすぐ、日光を求めて直立しようとしています。次は平地。日当りの良いせいか、穂先がすでに開きつつあります。食用には日光に当たらぬうち、つまり地表に出るまえに掘り出すのがアクを抑える第一だそうで、名人になるには観察力が必要です。三つ目の画像はすでに1メートルほどの高さ。竹は一日に1メートル前後育つこともあり、ほんの数日で竹林の景色が変わります。

 
(左)地表の地下茎 (中央)街灯に竹 (右)竹割りタイル

地表に現れた地下茎。手指ほどの太さで節ばった地下茎により竹は勢力を伸ばします。苔と合わさり廃墟のような雰囲気を醸していますね。竹林を広げたくない場合には、地表の竹よりもむしろ地下茎の伸張を防ぐことが必要になります。竹林のそばに立つ電灯は支柱が竹で覆われていました。四つ割りした竹のような、赤い竹割りタイルはオマケ。京都のカフェで見つけました。

ここまでの写真は、京都と東京で見つけたモウソウチクを中心にご紹介しました。私が時々出掛けるのは、世田谷区内にある都立公園の蘆花恒春園です。徳冨蘆花の旧宅と敷地を元に整備された公園で、北西の一角に母屋と付属する建物や竹林が残っています。今ではすっかり住宅地になった世田谷の当地も、青山から越してきた蘆花にとっては「都落ち」という表現がされるほどの武蔵野の田舎でした。「美的百姓」としての蘆花の生活は『みみずのたはこと』に詳しく記されています。

 
(左)母屋と竹林 (右)竹林の足元にササ類

左の画像では蘆花の住まいを右手に望みつつ、モウソウチクの竹林を左手に。反対側から見た右の画像は、下草として群生しているクマザサ越しに。敷地には竹の他にも雑木が転々と生えていて、武蔵野の風景の歴史を偲ぶことが出来ます。整備された竹林の散策は気持ちのよいものですが、梅雨が近づくにつれて蚊の姿が多くなりますので、新緑と新竹を楽しめる五月は竹林散策のベストシーズン。もう一二カ所、出掛けてみるつもりです。
 

 

 

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