第十四回 計画と感覚

竹ヒゴを編んで、籠を作り上げるまでの工程をすでにご紹介しました。その工程は、大きな竹から小さな素材(竹ヒゴ)を作って、そこから再びべつな形(竹籠)を構成するという複雑な作業で、よく段取りし、それを実行することが求められます。一方、こうした計画的な仕事とはまた異なる、感覚的な仕事もあり、その話を今回は書きます。

竹の切片の山。なんでしょうか。

竹の切れ端のようなものが積み重なっています。一見すると単なる切り屑のようです。これを整列させてみましょう。

山を崩して、並べます。

整列すると、それぞれに景色(模様)の異なる切れ端に規則性が見えてきました。何かの材料でしょうか。そうです、これは菓子切の材料です。こうして竹をまず割って一定の寸法に整え、そこから姿の良いものを選んでいきます。以前にも書いたように竹は意外に癖のある素材で、案外、捻れたり曲がったりしているものです。サイズを小さくするほど1ミリの差が比率としては大きくなってきますので、こうして小さな切片にしてから、選別するのです。多少の主張は個性として生かし、あまり逸脱するものは除外していきます。

そうして選んだら、次は小刀で削ります。削りの作業は一発勝負で、削りすぎたら足すことは出来ません。すべて竹の性質が違い、節の高さや角度も違うので、ノギスのような物差しで測るのではなく、ここでは手の感覚、目の感覚といった自然の物差しが頼りになります。そうした感覚の世界を通じて、竹の菓子切が生まれます。

竹の菓子切

計画と感覚、正反対のようですが、どちらも竹と付き合う上では欠かせないもので、そして仕事全般においても必要な二つの核ではないかと考えています。さて、ここからは余談になりますが、いま来春までに千本を目標に菓子切を削っています。この目標を達成するにも、やはり計画と感覚は欠かせないものです。

 

 

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