木の家と人の健康・快適性

木の家と人の健康・快適性

5.木の家の香りを分析する

このような人の心身に及ぼす影響の違いを、それぞれの実験棟の香り成分の違いからも検討するため、それぞれの実験棟の揮発性成分分析を定期的に実施してきた。その結果、無垢材棟のほうが新建材棟よりも多様な成分のピークを確認でき、多様な香り成分を含んでいることが確認された。

ただし、どちらの棟においても木材の主要成分であるβ|カジネンやα|ムウロレン、α|キュベベンといったセスキテルペン類が多く検出され、成分の大半を占めていた。量的には、無垢材棟と比べて少ないものの、新建材棟においても杉由来と思われるセスキテルペン類が検出された。これらの成分は、構造材に使用されていた杉由来と考えられるが、ビニルクロスで覆われているため、量的には少なかった。揮発性成分量の相対的な指標となる全ピーク面積値は、無垢材棟が新建材棟の約3.7倍も大きく、無垢材棟の室内の揮発性成分量が新建材棟よりも圧倒的に多いことが明らかとなった。こうした揮発性成分の量的な違いは、定量分析を定期的に実施することによって、季節的に変化することも明らかになってきた。成分の大半を占めるセスキテルペン類の量の平均値は、どちらの棟においても気温の低い3月よりも気温の高い6月において高く、季節による変動が確認された。

これまでの分析から、実験棟内の揮発性成分量は年間を通して無垢材棟のほうが新建材棟よりも常に高いことが確かめられており、またその増加の仕方は新建材棟では6月は3月の約3倍、無垢材棟では約7倍となり、無垢材棟では季節による量的な変動も大きいことが明らかとなった。つまり無垢材棟の揮発性成分は新建材棟よりも質的にも量的にも豊かで、季節による変化も大きいことが示された。

木の家の香り成分を調べる

木の家の香り成分を調べる

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

Optionally add an image (JPEG only)