時空を超えて蘇った総ケヤキの古民家

時空を超えて蘇った総ケヤキの古民家

時空を超えて蘇った総ケヤキの古民家

滋賀県湖北の余呉町から
数々の月下氷人(仲人)の手で、伊豆へと移された民家。
数百年の時を生きた古材の魅力、そして現代的な住まい方を
折田邸の設計者である木下龍一さんに聞きました。

イラスト=鈴木聡(TRON/OFFice)

時空を超えて蘇った総ケヤキの古民家

折田邸は琵琶湖の北︑余呉町の鷲見という土地に建っていた民家の材を使って建てられた住宅だ。集落がダムに沈むということになり、余呉町が解体した材を滋賀県の古材店・島村葭商店が保管。建築家の木下龍一さんと、伊豆の棟梁・小澤喜好さんの手で再生されることとなった。「いわゆる伊香型と呼ばれる民家。家。築年数は200年ほどでしょうか」と木下さん。かの地は目が詰まったケヤキの良材の産地。また、材の表面がすべて手斧などで仕上げられている。「木挽きや大工の手仕事か生まれたれた味わいが魅力的なんですよ」と木下さんは言う。

伊香型の民家は、「ニウジ」と呼ばれた広い土間があり、座敷へと続いていく間取り。「プランニングは平面の歴史を大切にして、架構を改変することなく、使われていた時のままに生かす」と木下さん。折田邸で土間は板張りになったが、基本的なプランは変わらない。その上で、のびやかな開口部を設けるなど、住む人の心地よさを考えた工夫も。「日本の家はもともと可変的。住む人が自由に、現代的に暮らすことだってできる。だから古い家を壊すのではなくて、生かす。その魅力をもっと知ってもらいたいですね」。

折田邸の建て方。立地は丘の上で、材を運ぶ苦労はあったが、見晴らしは最高。(写真・木下龍一さん提供)

リビング・ダイニングの上に架かる立派な梁。柱よりも太い材が使われている。角がとれ、丸くなった柱も合わせて時の流れを感じさせる

ゲストルームから見える長尺の梁。屋根の重みを受けている。一本と同じものがない、古材特有の風合いが魅力。

重厚な階段も古材の存在感があってこそ。手すりを支える柱には、かつて人が残した手仕事の跡が。

折田邸の建具。ステンドグラス、障子に地袋の網代、格子。古建具と新しい建具が違和感なく共存している。

チルチンびと 80号掲載

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