緑の小道がくれた豊かさ物語を紡ぐ家

福岡県久留米市 注文住宅 ㈱未来工房
福岡県

緑の小道がくれた豊かさ
物語を紡ぐ家

ひときわ濃い緑に囲まれ、趣ある佇まいのK邸。
さまざまな暮らしのシーンを想像して建てられた家は、
5年の時を経てその地にしっくりとなじんでいる。

福岡県久留米市 注文住宅 未来工房 K邸
設計=石井喜之/創企画一級建築士事務所 施工=㈱未来工房 写真=米谷 享 文=内田珠己

小道にこぼれるように
草花を植えたい

新緑がまぶしい初夏の昼下がり、福岡県久留米市にあるK邸を訪ねた。のどかな田園風景の中にふと、なんとも雰囲気のある木張りの家が現れる。溢れんばかりの緑に囲まれた風合いのある板壁、招き屋根から突き出した煙突、周囲の風景に溶け込むダークブラウンの陶器瓦が、どこか異国情緒を漂わせる。石敷きのアプローチはまるで、訪れた人を物語の世界へ招き入れるかのようだ。

「“魔女の家”がコンセプトなんです。雨の日は表情が違って、それもまたいいんですよ」と、微笑む奥さん。大の読書家である彼女の想像の世界が、いたるところに散りばめられているという。

庭を通る細い道を歩きながら、奥さんがつづける。「庭は、小道に草花がこぼれるようなイメージで。造園屋さんに最初に植えてもらった数本の木以外は、少しずつ自分で植えました」。一つひとつ葉や花の状態を確かめては手にしたハサミで整えたり、しゃがみこんで雑草を抜いたり。その様子は植物と対話しているかのようで、庭の草花を心から大切にしていることが伝わってくる。

さぞや庭に思い入れがあったのだろうと思いきや、元々草花を愛でるタイプではなく、「やり始めたら面白くなってきた」と言うから驚かされる。もっとも、「土間のフレンチドアを開けてデッキから庭へ出る」「寝室の格子窓から庭の緑が見える」といった暮らしの場面については具体的なイメージがあり、それらを元に設計が進められた。

読書で培われた
イマジネーション
暮らしのシーンを想像して

玄関ドアを開けると、淡いグリーンの腰板が目に入る。ここでも外観と同様、ヨーロッパの田舎の家といった印象を受ける。つづくリビング・ダイニングは吹き抜けのある広々とした空間。目を見張るのは北側に面した出窓で、ブルーに塗られた壁を大きくくり抜くように白枠で縁取られている。北側は田んぼなので遠くまで見通せ、外からの視線も気にならない。また、やわらかな光が入ってくるため、読書がしづらい直射日光を避けることができ、奥さんにとってもいいことずくめだ。

L字型のキッチンは使い勝手がよく、中でもこだわったのが、自然素材でできたリノリウムの床。白と黒の格子模様も、好きな本のイメージからだ。

K邸の特徴とも言えるのが、階段室の壁にびっしりと並ぶ本棚。家じゅうの本がこの棚に収められ、階段を通るたびに自然と本に目が留まる。子どもたちは階段に座って読書をすることもあるのだとか。「本のサイズに合わせて、ミリ単位で設定しました」と、設計の石井喜之さん。読書家の奥さんならではのこだわりがここにも表れている。

Kさん夫妻が家づくりを考え始めたのは、3人目の子どもが生まれてから。どんな家にしよう、というよりは、どんな暮らしがしたいか、ということが夫妻にとっては重要だった。暮らし方に重きを置く未来工房は、家づくりのパートナーとしてぴったりだったのだ。

夕刻が近づき、近くの小学校から帰路につく子どもたちの声が聞こえてくる。K家の3人も次々と、デッキを通って土間から帰宅。二人の娘は「今日は外で食べたい」と、おやつとお茶をデッキへ運び、長男は2階でいそいそと宿題を始めた。そんな姿を、目を細めながら見守る奥さん。家族それぞれの物語が、この家で紡がれていくのだろう。

 

福岡県久留米市 注文住宅 未来工房

 

所在地 福岡県久留米市
面積 敷地 556.29㎡
延床 142.05㎡(1階 89.70㎡ 2階 52.35㎡)
竣工 2014年9月(工期 2014年3月~9月)
設計 石井喜之/創企画一級建築士事務所
施工 ㈱未来工房
構造形式 木造軸組工法
主な外部仕上げ 屋根=防災瓦(三州野安)
軒天井=SPF材36mm現し+防腐オイル
外壁=無垢木単板張り
主な内部仕上げ 天井=SPF材36mm現し
壁=紙クロス、杉(腰板)
床=ヘムロック材厚33mm、真砂土(玄関)、
リノリウム(キッチン)、土間タイル(トイレ)、
レッドパイン厚35mm+ドノスオイル(2階)

 

チルチンびと 101号掲載|電子書籍でご覧いただけます

 

株式会社 未来工房
〒830-0047 福岡県久留米市津福本町731
 
未来工房は、いつもの暮らしを、生きていることそのものを幸せだと思えることこそが
本当の豊かさだと考え、家づくりをしています。
そんな豊かさを感じられるのは、石油化学の工業製品で作られる家ではなく、
足音も手ざわりも心地よい本物の素材でつくる、心くばりに満ちた手しごとの家。
何の変哲もない豊かな日常をつくるために、
私たちはこれからも、本物の自然素材で家を作り続けます。

 

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