梁のかたち図鑑
梁のかたち図鑑
建物の水平短径方向に架けられ、
床や屋根などの荷重を柱に伝える材である”梁”。
梁のいろいろなかたちを紹介します。
磨き仕上げ・磨き丸太
原木丸太の樹皮をはぎ、製材することなく表面を砂や水圧、サンドペーパーなどで磨き、天然木の姿をそのままに仕上げた梁。材に割れが入ることが多いが、天然木の特徴の一つとして楽しみたい。
設計・写真提供=丹呉明恭
たいこ落とし
丸太小口の長径を縦軸にして、左右両側面を大きく挽き落とした梁。梁上下面は樹皮をはいだままの鬼皮剥ぎ、または手斧 、鉋 で仕上げる。樹木の自然な曲がりを生かして使用することも多い。
設計=泉 幸甫 写真=相原 功
(※JASたいこ材)
たいこ落としは、日本農林規格(JAS)では「たいこ材」と表現される。また、たいこ梁、たいこ挽きといわれることも。外周面の仕上げは、天井裏など隠す場合は仕上げずに使われることも多いが、化粧梁として使用するには、手斧や鉋などで仕上げたい。
八面取り
自然木の湾曲を残し、梁断面を八角形に面取りする場合と、断面を正方形に製材し直線材とした後、八角形に面取りする場合がある。シャープなエッジと各面に当たる光のグラデーションを楽しめる。
設計・写真提供=丹呉明恭
瓜皮はぎ
多くは、丸太を製材することなく樹皮をはぎ、自然木の姿を生かしながら、その外周を瓜の皮をむくように手斧や鉋で薄くはいで仕上げる。小さな凹凸が梁全体に陰影をつくり出し、やわらかな印象をもたらす。
設計=松本直子 写真=野寺治孝
平角材
一般に梁といえば、丸太の四方を製材した芯もちの平角材。割れが入っても強度は低下しないが、化粧梁として使用する
場合には、梁上面に背割りを入れ、割れの発生を抑えること
もできる。
設計=泉 幸甫 写真=小川重雄
根曲がり材
傾斜地で育ち、自然と湾曲した根に近い箇所を生かして使う。上に凸をもつ曲線部分は強度が高い。この自然な曲がり具合でやさしく、また力強く、とその空間に与える印象は大きく変わる。
設計=松本直子
|手斧仕上げ|
梁の仕上げは主に鉋やサンドペーパーなどが使われるが、できるならば大工の手仕事が伝わる手斧仕上げを選びたい。
手斧は最も古くから伝わる大工道具の一つで、登呂遺跡の建物にも使われた痕跡がある。柄は主に槐の木が使用され、直行する蛤状の扁平な両刃を取り付ける。手斧はまさに大工職の手仕事を映し取る仕上げが魅力だ。荒々しく大きく削る仕上げや、細かく柔らかく繊細に仕上げる方法まで、手仕事ならではの多種多様の表情を求めることができる。手斧仕上げは梁材以外にも柱や板材の仕上げにも使われる。特に手斧仕上げの床板は、その凹凸が生み出す陰影が美しく、心地よい肌触りに注目が集まる。
(左)角(エッジ)をあまり立てずに全体の丸みを残した仕上げ。写真=輿水 進(中央)角(エッジ)を立てつつ、広く浅く手斧ではつって仕上げている。写真=傍島利浩(右)コツコツと手斧を打つ音が聞こえそうな、細かい仕上げ。写真=輿水 進
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