3姉妹を引き寄せた土壁の居心地

神奈川県横浜市 ワイズ「3姉妹を引き寄せた 土壁の居心地」
神奈川県

3姉妹を引き寄せた
土壁の居心地

水まわりの改修を考えているうちに新築に話が広がり、
調湿性能の高い土壁の家を建てた夫妻。
健やかな住まいの様子は、
家という場所の豊かさを物語っていた。

神奈川県横浜市 注文住宅 Y’s K邸
設計・施工=㈱Y’s 写真=川辺明伸

横浜市栄区の住宅密集地に建つこの家には、5人家族が暮らしている。当初は夫婦と三女の瑠以さんの3人が住む計画だったが、一昨年の春に家が建ってから、成人して家を出ていた姉妹たちが、引き寄せられるように戻ってきた。「家の居心地がよくて」。そう姉妹たちが声を揃える土壁の家が建つまでにはこんな経緯があった。

そもそもの始まりは、キッチンなどの水まわりに不具合が生じ、床も含めた改修を考えたことからだった。住みながら直すことは難しく、改修の全体の費用、引っ越しを考えると「それならば、いっそのこと、老後の家として建て替えてしまおう」。夫婦の間にそんな気持ちが浮かび上がった。

自然素材を生かしきる
こだわりの木と土の家

建て替えの考えが定まると、先々の年金生活を見越して、「できるだけメンテ好きなものに囲まれてシンプルな生活がしたい素材やつくりに愛着を持った大切なものを、そばに置いてナンスフリーの家にしたい」とご主人は思った。「外壁はガルバリウム鋼板もいいかなと、素人ながら考えていました。ワイズさんと知り合って話しているうちに、土や漆喰は時間をかけて固まっていくわけだし、意外とメンテナンスが楽なのかな、とふと気づいたんです」。竣工時が最も新しく、のちに劣化する素材もあるが、建ってから素材が成熟していく土壁ならば、維持費もおさえられるのではないだろうか。また、西川材の檜を自然乾燥し、伐採から施工まで、木の寿命を保つ手法を選ぶ、「素材を生かしきる」同社の姿勢にも関心があった。

土壁はメンテナンスフリー

家づくりは「土の家」が大いに参考になった。新居には、夏涼しく冬は暖かいこととメンテナンスフリーをコンセプトに、希望していた版築、ペレットストーブ、ステンレスのキッチン、ご主人の趣味の燻製スペースが組み込まれた。

奥さんたっての希望の「夏障子」のしつらえも実現した。「娘たちは自分が育ったときとは違う環境で生活している。日本の四季の移り変わりの美しさを感覚としても持って欲しかった」。リビングの趣きある手工芸の数々は、奥さんの静かな主張を際立たせていた。そして、部屋全体を覆う土壁は外音を遮断し、しんと静まり返ったその空間に、丹念に編まれた簾からやさしい光が落ちている。

新居への喜びは、姉妹たちにとっても大きなものだった。床下に仕込まれたエアコンの効果で更年期症状の冷えに悩まされていた母の体調が回復したこともある。奥さんや姉妹たちは軽い足取りで、気持ちよさそうに素足で歩きまわっていた。

 

神奈川県横浜市 注文住宅 
 ワイズ 平面図

 

 

所在地 神奈川県横浜市
面積 敷地 127.11m²
延床 101.04m²
竣工 2017年5月(工期2016年10月~2017年5月)
設計・施工 ㈱Y’s
構造形式 木造伝統工法・木造軸組工法・丸太組工法・その他
主な外部仕上げ 屋根=ガルバリウム鋼鈑・横葺き
軒天井=軒天無・野地化粧現し 杉・羽目板厚12mm +化粧垂木 いろは塗布
外壁=木摺り漆喰+オリジナル掻き落とし仕上げ・杉 羽目板厚15mm いろは塗布
主な内部仕上げ 木摺り土壁、木摺り漆喰など
天井=杉羽目板・プラスターボード 上糊土仕上げ
壁=木摺り土壁、木摺り漆喰、和紙貼りなど
床=杉無垢材 厚30mm +蜜蠟ワックス塗り

 

チルチンびと100号掲載|電子書籍でご覧いただけます

 

株式会社 Y’s
〒253-0021 神奈川県茅ヶ崎市浜竹3-4-64
 
湘南地域を中心に現地調査からアフターサービスまで一括して自社で行っている会社です。
仕上げ材にはもちろん無垢材や自然素材をこだわって使用しています。
木造軸組工法の構造材は基本的に出荷証明の明らかな国産材を限定使用し、
耐震性・断熱性・遮音性等、中身にもこだわり安全な家を目指しています。

 

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