左官の技を生かしたのびやかな住まい

愛知県西尾市 注文住宅 勇建工業
愛知県

左官の技を生かした
のびやかな住まい

水平に伸びる屋根のラインと薪ストーブの煙突が印象的なO邸。
玄関前の版築壁をはじめ、玄関の鎧壁やリビングの漆喰壁など、
バリエーション豊かな土壁がやわらかな表情をみせる。
随所に左官の技術が光るO邸を紹介する。

愛知県西尾市 注文住宅 勇建工業 O邸
設計・施工=㈲勇建工業 写真=畑 拓 文=上野裕子

土壁に向き合う
姿勢に魅かれる

周囲に畑が広がる住宅街の一角に建つ、Oさん一家の住まい。端正な外観に華を添えるのが、玄関前の版築壁だ。カラフルな版築壁は、型枠に土を1層ずつ入れ突き固めることを繰り返してつくる、昔ながらの左官仕事。この版築壁は、ご主人のリクエストで実現したのだという。

ご主人は「家づくりを考え工務店について調べる中で、勇建工業さんのこだわりが抜きん出ていました。土壁を標準仕様としていて、漆喰塗りの際に海藻糊を炊くなど左官に対する徹底したこだわりに魅かれました。だから、この家ではさまざまな左官壁を楽しめるようにとお願いしたのです」と振り返る。素材にこだわるご主人が選んだ勇建工業について、奥さんは「家を建てた人のSNSをたくさん見ましたが、勇建さんなら、他とはまったく違うおもしろい家づくりができそうだなと思いました」と微笑む。

62年前に左官業として創業した勇建工業は、左官をはじめとする職人技を伝承した家づくりに定評がある。同社の加村義信社長は「土壁の快適さ、職人仕事の美しさを大切に家づくりを行っています。Oさん夫妻は私たちの家づくりに共感してくださったので、たいへんやり甲斐を感じました」と語る。

プラン作成時には、夫妻共通の「平屋で大きな開口部を設けたい」という希望に加え、ご主人は「薪ストーブと漆喰壁が映えるリビング」、奥さんは「オリジナルのキッチンと小上がり」といった要望を伝えたという。

洗練されたデザインと
職人技が調和する空間

こうした依頼に対して加村さんは、小上がりを設けた広いLDKを中心に、廊下で各室がつながる間取りを提案。リビングは大きな開口部で庭とつながり、子どもたちがのびのびと過ごせる空間となった。加村さんは「LDKの大空間をすっきりとした雰囲気にするために、柱の位置はよく考えました」と話す。

壁はご主人の「漆喰の質感が映えるように」という希望に応え、大壁とした。「素材のよさとシンプルなデザインのおかげで、飽きがこない洗練された空間になりました」(ご主人)。腰壁に大谷石を使ったキッチンは、奥さんの要望によるもの。「タイルや木なども検討しましたが、大谷石を使ってもらいたいとお願いしました」と話す。

Oさん一家がこの家に暮らし始めて約半年。玄関、寝室、LDK、トイレとすべて異なる壁の質感を楽しんでいるという。「土壁の寝室は落ち着きますね。夜にライトをつけると、壁の質感が映し出されてとてもきれいです」(ご主人)。「どの壁も素敵ですが、脱衣室の藁漆喰の質感が好きですね」(奥さん)。

意匠面だけでなく、調湿や保温など機能面においても、土壁のメリットを感じることが多いという。「隣に私の実家があるのですが、新建材で建てているので夏は暑くって。こちらに戻ってくると涼しくて快適で、こんなに違うものかと驚きます」(奥さん)。「夏は風が通るので、エアコンを使うのも最小限ですみますし、冬は薪ストーブを焚くとぽかぽかになります」(ご主人)。そう話す夫妻の笑顔が、自然素材と職人の技が生み出す空間の心地よさを物語っていた。

 

愛知県西尾市 注文住宅 勇建工業 平面図

 

所在地 愛知県西尾市
家族構成 夫婦+子ども2人
面積 敷地 499㎡
延床 98.8㎡
竣工 2021年1月( 工期2020年6月~2021年1月)
設計・施工 ㈲勇建工業(設計:加村義信・現場監督:中山朝登・大工棟梁:公文・左官:澤田眞彦)
構造形式 総吉野檜木造軸組み工法
主な外部仕上げ 屋根=三州瓦
外壁=勇建オリジナル掻き落とし仕上げ
軒天井=杉板貼り
主な内部仕上げ 天井=杉板貼り
壁=豊田中塗り土仕上げ 京土壁仕上げ
炊き海苔本漆喰仕上げ
床=松・檜・杉フローリング

 

チルチンびと 別冊64号掲載

 

有限会社 勇建工業
〒465-0065 愛知県名古屋市名東区梅森坂1-222
 
「職人が建てる美しい壁のある家、目利きの選んだ素材と、確かな技術が織り成す、本物の心地よさ」
土壁と漆喰にこだわった注文住宅をつくる工務店です。
安心できる素材で断熱性能が高く耐震性の高い新築や
古民家再生・再築・マンションリフォームを設計施工しています。

 

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