土壁(木造住宅の外壁)

年を経た蓑壁。(常滑)

土壁(木造住宅の外壁)

文・写真=小林澄夫

下見板(焼杉、竹、草、瓦)

木舞土壁は一般的に割り竹を木舞縄で結んで木舞に組んだものを下地に土を塗ったもので、木舞には竹のほかに割り木や竹の採れないところでは葦の木舞がある。木舞土壁は荒土を木舞に塗りつけ、その上を土で中塗りしたもので、風雨や湿気には弱く、外壁にはその保護のための工夫がみられる。レンガやコンクリートの洋風の組積造の壁とちがって木造住宅の木舞土壁は構造壁ではないので、土壁の上には風雨に耐えられるように漆喰を塗ったり、大津を塗ったりするが、土壁に草を塗り重ねた蓑壁とするか
下見板やヒシャゲ竹などを張って二重壁とした。

また、木舞土壁には土蔵式に外部をすべて塗りくるんで漆喰や大津で仕上げ塗りをした町家の塗り籠めの壁もある。そのほかには、関東大震災後普及した防火住宅として木舞土壁の外側にセメントラスモルタルを塗り仕上げた洗い出しや掻き落としなどの天然の砂や砂利石を使用した擬石風の人造石塗りがおこなわれた。木舞土壁に荒壁のままでも、土中塗り仕上げの壁でも厚みがあるので、古びるとそれなりの錆びや風情を味わうことができた。

ラスモルタル

ラスモルタルは関東大震災後、防火住宅の外壁工法として一般に普及して木造住宅の外壁といえばラスモルタル壁というまでになった。木造住宅の木舞土壁の外部に木摺り板を打ってその上に防水紙とワイヤラスを張ってセメントモルタルを塗った壁である。ラスモルタルは、いちどラスコスリモルタルを塗って乾かしてからその上にモルタルで仕上げ塗りする。

セメントモルタルはセメントと川砂を配合したもので、セメントのくすんだ灰色に仕上がり目立たない、ただ丈夫で強い壁にしかすぎないが、塗り終わってしまり具合をみて、表面を水刷毛で引くとモルタルと混ぜた川砂の目が浮き出して味わいのある壁となる。

ラスモルタルの上への仕上げには、掻き落とし、スタッコ、洗い出し、研ぎ出しなどの人造石塗りの壁がある。

掻き落としはセメントと顔料の配合材に天然の砂を混ぜた材料を塗り付け、鏝の刃や専用の釘の先の出た掻き落としの工具で、乾き具合をみて掻き落として仕上げたものである。

洗い出しはセメント(顔料を混ぜた配合材)に天然の色砂利を混ぜたものを塗り付け、しまり加減をみて噴霧器で水を掛けながら洗い出したもので、天然の色砂利の色や肌をそのまま壁に表現するものである。洗い出しの壁は経年変化の汚れのない美しい壁である。

研ぎ出しは天然の砕石をセメントに混ぜたものを塗り付け、はがね鏝で伏せ込み、それを砥石で研ぎ出し、磨きあげたものである。

掻き落としも洗い出しも研ぎ出しもいずれも天然の石それぞれの表情を左官の手で人工に造り出したものであるが、素材がセメントということもあってヒビ割れ防止のために生地を切る必要があって、その目地割に自然石の石積みとはちがった意匠的な美をみられる。

また、木造住宅の縁側や窓には雨戸があって両わきに戸袋が付くが、その戸袋の洗い出し壁のデザインはモッコ(四角を丸く面取りすること。)の縁取り仕上げ、縦横の目地入り、稲妻目地など職人の自由なデザインの遊びに溢れていて木造住宅の外壁をみる楽しみの一つである。

チルチンびと 別冊66号掲載

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