メンテナンスで薪ストーブの健康診断を

メンテナンスで薪ストーブの健康診断を

メンテナンスで
薪ストーブの健康診断を

薪ストーブを使いっぱなしにしていませんか?
そのまま翌年使ったりするのは、火事のリスクも高まり本体にもダメージを与えます。
メンテナンスをすれば、適切な使い方ができているかどうかの診断もできます。
自分でできるところ、プロに任せるところを把握し、きちんとお手入れをしましょう。

監修=西川博之(薪ストーブ・メンテナンス専門店 ショルン) 写真=米谷 享

薪ストーブ
薪ストーブ 背面
今回メンテナンスをしたのは、バーモントキャスティングス社のアンコール2040 というストーブ。
今回メンテナンスをしたのは、バーモントキャスティングス社のアンコール2040 というストーブ。

解体された薪ストーブの部品

解体された薪ストーブの部品

1.2. ウォーミングシェルフ(オプション品) 3. クッキンググリドル 4. リフラクトリーエンジン 5. ファイヤーバック 6.7. リフラクトリーエンド 8. バイパスダンパー 9. ファイヤーバックプレート 10. アクセスパネル 11. インナーパネル 12. キャタリティックコンバスター 13. トップ 14. アウターバック

今回使用したメンテナンス用道具

今回使用したメンテナンス用道具

1. 煙突掃除用ワイヤーブラシ 2. アルカリ電解水 3. ガスケットセメント 4. シリコンシーラント 5. ストーブポリッシュ 6. スレッドコンパウンドスプレー(焼き付き防止剤) 7. スレッドコンパウンドクリーム 8. メンテループ(防錆潤滑スプレー) 9. ラスペネ(浸透潤滑剤) 10. 業務用掃除機(建築用のもの) 11. バール 12. 金属ブラシ 13. レンチ 14. 六角レンチ 15. 養生ラップ 16. ドライバー 17. 刷毛 18. ハンマー 19. ザイル 20. ヘルメット 21.STANLEY の道具箱

煙突の掃除

煙突内に残った煤は、火事を引き起こすおそれがあります。
高所から落ちる危険性もあり、煙突掃除はプロにお願いしたい。

煙突の掃除
西川さんは、煙突掃除用ブラシを細くやわらかい針金で特注している。これだと煤を隅々まで取りやすく、煙突へのダメージも少ない。出てきた煤の状態を見れば、薪ストーブが正常に焚かれていたかわかる。アメ状の煤は、燃やしている薪、温度の上げ方が悪い。さらさらの煤は適正に焚かれている証拠。

トップの掃除

鍋などを置いて調理する台をはずして掃除しましょう。
ここは初心者でもできる箇所。

*家庭用掃除機を使用すると、細かい灰でフィルターの目が詰まるおそれがあるので注意。

炉内の掃除

炉内のつくりは複雑で、点検箇所もたくさんある。
部品をきちんと元に戻す自信がなければ、最初からプロに任せよう。

本体表面の掃除

焦げ付いた鍋の吹きこぼれなどもきれいにしましょう。
靴磨きの感覚で自分でできます。

フロントドアガラスの掃除

ガラスに煤がついていては、火の燃え方が見えません。
気がついたら自分でもやってみよう。

ドアの締まりを確認する

ドアの締まりを確認する
各ドアにキッチンペーパーなどの薄い紙片を挟んで引っ張る。シートが抜けてしまったらドアのビスなどがゆるんでいたり、ガスケットが硬化している証拠。ビスの締め直し、ガスケット交換をしてしっかり閉じることで、燃焼効率も元通りに。

そのほかの確認

キャタリティックコンバスター 灰受け皿
(左)キャタリティックコンバスターのマス目が歪んだり欠けたりしていたら交換時期。2 〜3 年に1 度は交換を。(右)灰受け皿に溜まった灰は、断熱材の役目もするので、シーズン中は溜めたままに。シーズン後にまとめて捨てる。

(左)背面の点検では、1次空気取り入れ口と2次空気取り入れ口に埃などが溜まっていないか確認を。角度的に見るのが難しいときは鏡などを使うのもいい。(右)2次空気取り入れ室に灰などが落ちていないか確認を。灰などがあると取り入れる空気の量が減ってしまうため。

チェーンソーのメンテナンス
斧のメンテナンス

火を楽しむ秘訣は
薪ストーブに愛着を持つこと

火を楽しむ秘訣は
薪ストーブに愛着を持つこと

「薪ストーブのメンテナンスを自分でできるようになると、さらに愛着が湧きますよ」。そう笑いながら話すのは、薪ストーブ・メンテナンス専門店「ショルン」のオーナーの西川博之さん。愛知県は知多半島の先端に近い海沿いのまちで、古民家を自ら改装し、拠点にしている。メーカーを問わずメンテナンスを行う西川さんは業界では異色。

実は西川さん、以前は設計事務所勤めだった。しかし、かたちだけを追い求めていた自分の生き方に疑問を感じていた時、建主から「家の中に火がほしい」という依頼を受け、薪ストーブに出会う。「アンコールっていう機種がかっこよくて。家の中で火遊びができる、という発想にぐっときてしまいました」と振り返る。

感動と同時に心に蘇ってきたのは、遠い昔の火の記憶だった。幼少期、お盆やお正月に祖父の家を訪れては、薪で風呂を炊いたり、おくどさんで餅を湯がいたりしていたという。「当たり前すぎて忘れていたんです。その火の思い出がふっと心に戻ってきて、これだ、と。古い良い本を、本棚からもう一度見つけたような気分でした」。

その後、薪ストーブメーカーに勤務した西川さんは、さまざまなユーザーと交流する中で、ある問題に気づく。「機種が古すぎたり、保証の問題などで、修理やメンテナンスを受けられず困っている方が多くいたんです。そのせいで煙道火災も起きていて。でも、火を使いたいという気持ちは皆同じ」。その後、メーカーに勤務しつつ、休日はほかのメーカーやストーブ工房へ行き、さまざまな機種のメンテナンス方や構造を勉強した。

メンテナンス専門家として独立して5年。各種、火にまつわる相談にのっていたところ、設置工事も依頼されるように。そのほかメンテナンス講習会を開くなど、正しい使い方の指導も行っている。「薪ストーブを正しく理解してのめり込んで、そして火と仲良く遊んでほしいですね」と西川さんは熱く語る。

薪ストーブ・メンテナンス専門店 ショルン

本体の設置や、買い換え・薪の手配なども行っている。〒470-3235 愛知県知多郡美浜町大字野間中新田97
☎ 0569-77-2889
E-Mail:squareone2006@gmail.com

撮影協力:CRUSOE wood works

古い家具のリメイク、木工事、薪販売、造形教室など。愛知県知多郡美浜町大字野間本郷157
E-Mail:crusoe.wood@gmail.com

チルチンびと 82号掲載

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