土壁素材図鑑

土壁素材

土は、古くから無垢の木や紙などと同じように
日本の住まいづくりには欠かせない素材でした。
土は湿度が高ければ湿気を吸い、
乾燥時には吐き出します。
蓄熱性もあるので、
四季を通じて室温を安定して保つ役割も
果たしてくれる素材です。

協力=小林澄夫

土壁とは?

土壁は荒壁・中塗り・仕上げの3層によってつくられます。現在ではラスボードを下地に、既成品の仕上げ材を使う簡素化された塗り壁が主流になっていますが、真壁では壁の厚みは柱の太さの2分の1ほどに仕上げるのが日本の土壁の本来の姿といわれています。塗り壁のよさは、その表面に塗られた素材の表情やデザインにあるのではなく、下塗りから上塗りまで塗り重ねられた全体にあり、また、左官の技術はこの塗り層を重ね、そのつながりの厚みを自然に見せて実現することにあります。

地域によって
異なる土の色

ひとくちに土といっても地域や地層によって色や性質が異なり、一般的に関東の土は黒っぽく、関西以西は黄色っぽい、または赤みが強いといわれています。土の色は、岩石に含まれている鉄分の化合形態と、腐蝕の度合いによって決まります。たとえば、若い土は鉄分が結晶化していないので褐色に、それが雨や気温の変化などによる風化の進行とともに結晶化が進み、黄色からさらに赤色になっていくのです。つまり老化が進んだ土ほど赤っぽいのです。灌水などによって土中が酸素不足になると、鉄分の組成が変化して土に青色が現れます。また、落葉や枯枝や木の根、土壌生物などの有機化合物の腐植が進んだ土ほど黒みを帯びるようです。

かつてはそれぞれの地で採った土を壁塗りに使っていたので、おのずと地域の色が生み出され集落や街並み独特の色がありました。しかし現代では、原土採掘場で近代的な重機を使って掘り出した大量の粘土を、製土場で切り藁などとブレンドして製品化した既調合の土を使うのが一般的になっているため、地域性が失われたといわれています。

愛媛の原土
愛媛の原土
黄みを帯びた、愛媛県今治地方で採取した土。静岡以西の地域では粘土でありながら色味も美しい土が採取される地域が多い。
栃木の原土
やや青みがかったくすんだ色。関東の土独特の色合いといえる。

左官の材料は基本的に
土+水+スサなどの混合材

塗り壁に使われる土は粘土分を多く含んだ土です。粘性が高いほど固まりやすいのですが、それだけ収縮が激しいのでヒビ割れも生じやすく、砂や砂利、スサを入れることによって土の収縮率とバランスをとっていきます。

また、荒壁土に藁スサを入れて寝かし発酵させるのは、藁の有機分の発酵によって壁土の粘性が強くなり、壁土が固く丈夫になるからです。藁スサは、荒壁用は3〜5センチ、中塗り用は3センチ以下、仕上げには1センチ以下というように、次第に細かいものを使います。また、土をよくこねるのは、泥に粘りを生むのと同時に、吸着水(土の粒子の間に含まれていて粘土を固める役割を担う)以外の水分を押し出すことで、粘土の粒子の密着度を強くして丈夫にするためです。

仕上げの材料

仕上げ材には大きく分けて色土、漆喰、漆喰に砂を混ぜたハンダ、珪藻土などがあります。色土には産地や含有鉱物によって、白系・青系・黄系・赤系・黒系などがあり、焼き物に使われる土(愛知・白土)や泥染め用の土(八丈島)、畳表の染色用としての土(淡路・浅葱土)など地域の特産品に使われているものも多いです。土壁のはじまりは、土・スサ・砂をふるいにかけ、鏝で仕上げた京壁(京都発祥の壁)といわれ、茶褐色をした聚楽土は京壁の代名詞として有名な土です。

漆喰

日本の伝統的な白い壁といえば漆喰があげられます。漆喰は、石灰岩を焼いて得られる生石灰を水和反応させてできた消石灰に、糊と麻スサを練り合わせたもので、空気中の炭酸ガスと結合すると、もとの石灰岩と同じ組成に戻り硬化します。固まる際に収縮するので、壁と柱の間などに隙間ができないように施工時の注意が必要です。かつてはそれぞれの現場で、石灰・藁スサ・糊を、気候条件や下地に合わせて左官職人が調合して漆喰材料をつくっていましたが、現在は工場でつくられた既調合材を使う場合が多くなりました。漆喰自体は白が基本ですが、顔料を入れた色漆喰も各地にあり、地方によって材料のつくり方や施工法も違います。

珪藻土

珪藻土は、海や湖の中のプランクトンの死骸が永年にわたって堆積して化石化したものです。粒子に無数の孔があいており、その超多孔質構造が断熱・調湿・脱臭・遮音などの性能を発揮します。ただし、自ら粘性をもたないので、セメントや石灰などのつなぎ材と炭素繊維やガラス繊維などを混ぜて使用します。現在、珪藻土は商品として数社から発売されていますが、各社独自で開発し、それぞれ凝固材やつなぎ材の種類が異なり、成分によっては性能に違いがあるようです。

石灰岩
生石灰
消石灰

漆喰につなぎとして混ぜる布海苔、京板糊(布海苔の一種)、角叉は海藻糊と呼ばれています。海藻糊は乾燥させたものを釜で熱してその煮汁を漉して糊にします。

糊

仕上げの表現

仕上げの表現を大きく分けると、鏝で磨いて光沢を出した「磨き」、平らに押さえて仕上げる「押さえ物」、粒子の素材感を残す「撫物」、さまざまな道具を使って凹凸感を出す「荒し物」に分けられます。同じ素材を使っても仕上げの表現によって空間の用途ごとに壁の印象を変えることができます。

仕上げの施工例

面積の広い壁は、住まいの見どころの一つ。左の写真の施工例では、寝室には調湿性が高く音も反響しにくい切り返し仕上げ、トイレや洗面所は清潔感のある漆喰磨きや大津磨き、外壁には土佐漆喰を使うなど、部屋の用途によって仕上げを変える工夫が施されています。

施工=勇建工業(愛知県瀬戸市・Y 邸) 写真=垂見孔士

チルチンびと 100号掲載

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